Case Study

東京女子学園

創立116年目の伝統校。マーケティングのプロフェッショナルを活用し、ブランディングによる差別化に取り組む

フリーランス人材の導入で学校改革に弾みが。経験豊かな外部からの目線で、学校の強みを再発見

Customer profile

東京女子学園
東京女子学園理事・事務長 高津稲穂 様

創立116年目。女子教育のパイオニアとして、中高一貫教育に取り組んできた東京女子学園。多くの私立学校同様、少子化の影響により、差別化のためのブランディングに課題を抱える中、マーケティングのプロフェッショナルであるフリーランス人材Aさんを起用しました。外部の視点から学校の現状を分析することで強みを再発見し、ブランドを生かした新たなプロジェクトの立ち上げにつながりました。Aさんは学校理事の「良き相談役・理解者」として、組織の問題解決に向け継続的にコミットしています。

  • 課題

    少子化の影響で、私立学校が軒並み受験者数確保に苦しみ、経営改革を迫られる中、歴史と伝統ある東京女子学園にとっても、受験生にとって分かりやすいブランディング戦略が喫緊の課題だった。

  • 成果

    • ・外部の客観的な視点を取り入れたことで学校の強みを再発見できた。
    • ・学内の意見を統一し、将来を見据えた新プロジェクトの立ち上げにつながった。
    • ・学校職員自身の「働き方改革」という新たな視点が生まれた。

1世紀以上の歴史と伝統ある女子校が直面した、ブランディングの難しさ

WEBサイト

創立116年目。女子教育のパイオニア
オフィス街の一角。可憐な花を咲かせる梅の香に誘われて歩いていくと、周囲の喧騒とは一線を画する、静謐で凛とした雰囲気の建物があります。東京女子学園。女子教育のパイオニア、棚橋絢子校長を初代校長として迎え明治時代に創立されて以来、実に110年以上の歴史と伝統を誇る中高一貫の私立女子校です。「人の中なる人となれ」(人の中で生きてこそ、個人の輝く生き方ができる)を教育理念として、時代にふさわしい能力や見識を持つ女性の教育に取り組んできました。

少子化の中、学校のブランディングが急務に
創立から1世紀以上の時を経て、女性の教育を取り巻く環境は、大きな変化の時を迎えています。
女性が高等教育を受けること、社会に出て働くことが、一般的と考えられるようになりました。「少子化の影響もあり、受験者数を増やすため、歴史ある女子校が“共学化”を選択することも少なくありません」と、東京女子学園理事・事務長の高津稲穂氏(以下、高津氏)は言います。

そんな状況の中、東京女子学園でも、「地球思考」という指針を打ち出し、キャリア学習や海外留学、ICTの活用等、時代の変化に対応した特色ある教育を目指してきました。
しかし、女子校・共学を問わず多くの選択肢がある中、学校の魅力を受験生に分かりやすく伝えることは至難の業。

「差別化のためのブランディング戦略が、喫緊の課題でした」(高津氏)

フリーランス人材の導入で学校改革に弾みをつける

一般企業とは異なる「学校」改革の難しさ
大手IT企業で働いた経験を持つ高津氏は、最初に学校で働き始めたとき、驚いたことがあるといいます。「ペーパーレスだった前の職場から、紙と本が山のように積みあがった現在の職場へ。組織文化の違いに、最初は戸惑いました」(高津氏)

学校では、先生方や職員の皆さんそれぞれが高い専門性を持ち、数字だけでは割り切れない「教育」というプロジェクトに、長い時間をかけじっくりと取り組んでいます。そんな職場に、民間企業同様の「マーケティング」や「目標設定」という概念を突然持ち込んでも、馴染ませることは簡単ではありません。

外部人材ならではの視点で問題点を洗い出す
学校が置かれた状況を理解し、何をどこから変えていけばいいか、一緒に考えてくれる人材を探していた高津氏は、知人のつてでWarisの存在を知りました。「HPを見て、女性がよりよい人生を生きていくための事業に取り組んでいるという点で、共通するものを感じました」という高津氏。Warisから紹介されたのが、フリーランスのマーケティングプランナー、Aさんでした。

玩具メーカーや小売業で豊富なマーケティング経験を持つAさん。先生方へのヒアリングなどを通じ、「外部人材ならではの沈着冷静な視点で、丁寧に問題点を洗い出してくれました」と高津氏は言います。学校としては前例のないフリーランス人材の導入に、初めは遠巻きに見守る雰囲気だった職員の皆さんも、Aさんの客観的で的確なプレゼンテーションを機に、少しずつ学校の改革やブランディングへの関心が高まっていったそうです。校内で新たなプロジェクトを立ち上げ、自分たちの手で学校を変えていこうという雰囲気も醸成されていきました。

経験豊かな外部からの目線で、学校の強みを再発見

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伝統に裏打ちされた「女子教育」へのこだわりで唯一無二のブランディングを
校内のプロジェクトメンバーが集まって東京女子学園の未来を考える中で、近年加速している女子校や男子校の「共学化」についても話題にのぼりました。1世紀以上の歴史と伝統を持つ同校でさえ、そのような舵取りを視野に入れるほど、私立学校を取り巻く状況は厳しいものになっていると言えます。

しかし、高津氏やAさんも加わり分析と対話を進める中で、「やはり創立の原点である、“女子教育”にこだわろう」という方向に、意見がまとまっていきました。「女性に教養と行動力を」という創立者の理念のもと、時代の変化に柔軟に対応しながら女子教育の灯をともしつづけてきた歴史
こそが、東京女子学園にとって最大の「強み」であり、「ブランド」であると考えたからです。

理解し合えるパートナーとしてのフリーランス人材
学校の未来予想図を描いていく過程の中で、「Aさんは、なくてはならない存在になっていきました」と高津氏。「豊富な経験とノウハウがあるので、『1』話すと『10』分かってくれる。Aさんは異業種の出身ですが、お子さんがいらっしゃることもあって教育に関心が深く、“自分ごと”として学校の将来を真剣に考えてくれています。外部人材ではありますが、理解し合える、なんでも相談できる仲間として、本当に心強く思っています」

一般的な人材紹介のしくみでは、これまで関わってきた業種や職種、資格などの経歴情報をベースに企業と人材をマッチングすることが多いもの。「Warisの場合は、事前のコンサルティングが非常にこまやかでした」と話してくれた高津氏。
綿密なコンサルティングによって、組織が直面する課題も再発見することができたと言います。
「私たちが求める知識やスキルがあるということにとどまらず、同じ目線で一緒に考えてくれるパートナーを探していた私のニーズをくみ取り、ぴったりの人材を紹介していただきました」

卒業後のキャリアを支援するプロジェクトや、働き方改革の取り組みも

卒業後の女性のキャリアを見据えた新プロジェクトも始動
いま、東京女子学園では、「Happy choice of 31プロジェクト」という新たな事業に取り組んでいます。「“31”は、日本の女性が初めて子どもを産む平均年齢。仕事の上では、ちょうど現場のリーダーとして活躍し始める世代です。東京女子学園を卒業していく女性たちが、大学卒業後も幸せな人生を生きていくために、教育の中で何ができるか、という視点を取り入れたプロジェクトです」(高津氏)

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「校内予備校」など、中高一貫女子校ならではのきめ細やかな制度により、有名大学への進学者も数多く輩出している同校。それらの仕組みに加え、「新プロジェクトでは、大学卒業後のキャリアをも意識した専門性の高いコースを新設し、教育カリキュラムを抜本的に改革することで、あまたある私立学校との差別化を図ろうとしています」(高津氏)

次の課題は、校内の「働き方改革」
Aさんのように、従来の枠組みにとらわれない働き方を選択する仲間を迎え、「卒業後のキャリア」という視点から女子学生たちの未来を考える中で、東京女子学園で働く先生方や職員の皆さん自身の「働き方改革」を進めようという動きも始まっています。実際にどのような人事制度や賃金体系が同校にマッチするのか、Aさんと相談しながらアンケートを実施し、トライアルチームを作って研究を進めているそうです。

伝統ある女子校に、フリーランス人材が吹き込んだ新たな風。守るべきものは大切に、変えるべきところは大胆に変革していくことは、学校法人にかぎらず、変化の激しい時代を乗り越えようとするすべての企業に求められる在り方なのかもしれません。時代に合わせしなやかに変化し続ける母校の姿は、梅の花咲く学び舎を巣立っていく女子学生たちにとっても、未来を照らす灯台のように頼もしく感じられるのではないでしょうか。

東京女子学園

  • 東京女子学園
  • https://www.tokyo-joshi.ac.jp/
  • 1903年(明治36年)、当時の東京府下では初めて、私立の高等女学校として創立された東京女子学園。「教養と行動力を兼ね備えた女性(ひと)の育成」を建学の精神として掲げ、およそ2万人の卒業生を、時代を超えてさまざまな分野に送り出してきました。