フリーランスの偽装請負 何が問題点なのかを解説

Warisの杉山です。

人事部門のディレクターとして、人事業務全般を行いつつ、企業様向けの人事研修や組織コンサルティング、業務委託活用についての支援にも携わっています。

リモートワークの広がりや、コロナ禍の影響を背景とした大企業の副業解禁もあり、企業が外部のフリーランス人材を「業務委託契約」という形態で活用する流れが広がってきています。

その一方で、これらの人材を活用する上で、

「偽装請負に関してどのような点に注意すればよいのかわからない」
「トラブルにならないためのポイントを教えてほしい」

という声も多数聞かれるようになってきました。

そんな企業の皆様にむけて、偽装請負の何が問題点になるのかについて、詳しくお伝えします。

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■ 目次
1. まずは契約形態の違いを正しく理解する
2. 偽装請負とみなされないための判断基準
3. フリーランス人材を選定する際の判断基準
4. 契約時の判断基準とは?
5. 隠れた落とし穴!会計・税務上の判断基準とは?
6. 成果を発揮するための稼働時の判断基準

1. まずは契約形態の違いを正しく理解する

フリーランス人材との契約は「業務委託契約(請負または準委任)」で行われるケースが一般的です。

雇用契約や派遣契約と大きく違うポイントは、以下の3点です。まずは、この違いを正しく理解することが大前提になります。

(1)労務管理

業務委託契約:なし
雇用契約:必要
派遣契約:必要

(2)指揮命令

業務委託契約:なし(業務遂行に不可欠な範囲での情報提供や一部レクチャーなどは可能)
雇用契約:あり
派遣契約:あり

(3)就業時間や場所

業務委託契約:時間や場所は原則不問。但し、稼働時間や曜日、常駐場所について、双方で合意して定めることは可能
雇用契約:契約内容、就業規則などにより、会社側が時間や場所を定める
派遣契約:契約内容、派遣先などより、会社側が時間や場所を定める

これら以外にも「対価の支払い」「社会保険」「成果責任」、備品や経費の扱い」など、契約形態の違い故に理解しておくべき点はいくつかあります。

ですが、まずは先ほどの3点をしっかりと押さえることが重要です。

2. 偽装請負とみなされないための判断基準

業務委託契約で外部人材を活用する上で、会社や企業から最も多く懸念の声が寄せられるのは・・

「偽装請負についてどう考えればよいのか?」
「偽装請負は何が問題点なのか?」

という点です。

関連する法令に則った対応を行うことが大前提ですが、相談や通報などによる実態調査が生じた場合、いくつかのポイントを総合的に鑑みて、偽装請負に該当するか否かの判断がなされることが多いようです。

ここでは、私が普段から意識している問題点と判断基準をご紹介します。

問題点①:時間と場所の拘束性

時間や場所の指定など会社側からの一方的な拘束がある場合には「雇用」、時間的拘束や場所指定がない場合は「業務委託」と判断される可能性がある

問題点➁:指揮揮命

業務実態のなかで、会社側からの指揮命令・管理監督がある場合は「雇用」、指揮命令・管理監督がない場合は「業務委託」と判断される可能性がある

問題点③:備品貸与

会社側からの各種備品の供与がある場合は「雇用」、供与がない場合は「業務委託」と判断される可能性がある。但し、機密情報を扱う場合などは、契約書に定めることで回避は可能。

これらのポイントを意識して、契約内容を細かく定めることで、偽装請負とみなされるリスクを回避することが重要です。

 

3. フリーランス人材を選定する際の判断基準

人材を選定する際にも、フリーランス人材(業務委託契約)と正社員や契約社員(雇用契約)では契約形態が異なるため、各ステップにおいて細かな注意が必要です。

代表的な内容としては、利用するワーディングの違いがあげられます。

【 ステップ 】

業務委託契約:事前面談、打ち合わせ、双方合意、発注有無
雇用契約:面接、選考、試験、内定通知、合否

【 スタート 】

業務委託契約:契約開始日、稼働開始日、稼働量、稼働時間、追加稼働
雇用契約:入社日、労働時間、始業・終業時間、残業時間

【 対価 】

業務委託契約:報酬・委託料
雇用契約:給与

【 終了 】

業務委託契約:契約終了・契約満了、双方合意
雇用契約:退職、退職願、解雇

実態として、雇用契約と同質性が高いと見なされないよう、偽装請負のリスクを低減させるためにもこれらのポイントを意識しましょう。

また、最近は副業人材も増えているため、人材選定の段階で、現業での就業規則や諸規程に抵触しないか、申請状況等を確認するとよいでしょう。

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4. 契約時の判断基準とは?

雇用契約と違い、業務委託契約では、後々のトラブルを回避するためにも、細かい条件を双方で合意の元、契約書を必ず締結し、必要に応じて仕様書なども準備することが重要です。

まず、「契約期間、委託業務の内容、成果物や納品物、対価、支払い時期」など、基本的な事項を業務委託契約書や発注書に定めます。

その際、契約更改、打ち切り、満了時の条件も事前に確認するとよいでしょう。

また、業務内容や遂行プロセスに齟齬がなきよう、仕様書や確認書という形式で、委託内容について細かくすり合わせを行うこともあります。

交通費や諸経費の発生見込みがある場合には、負担先や請求方法、そして消費税(外税/内税)、所得税源泉徴収税の扱いについても事前に確認するとよいでしょう。

契約内容の留意点としては一般的な契約と同じようなポイントになりますが、委託業務の性質や契約相手によって

・請負(納品、成果物に対する委託)、準委任(役務提供に対する委託)の区別
・知的財産権の帰属権
・競業禁止の有無
・機密情報、個人情報、秘密保持などの取り扱い

これらの内容を契約書に盛り込むことも、大事なポイントです。

5. 隠れた落とし穴!会計・税務上の判断基準とは?

雇用契約の場合、一般的には給与として人事部が一括で処理を行うことがほとんどでしょう。しかし、業務委託契約では、外注費などの項目で各部門から直接発注することが多いため、支払いに関する処理で思わぬ困難に直面するかもしれません。

請求や支払いに関して、いくつかの重要な点があるようです。まず、契約書に定められた条件に従って支払いを行う必要があるでしょう。また、仕事の実績や成果物の証拠を残すことも欠かせません。複数の人が同時に働く場合は、決まった形式の書類を用意しておくと便利と言えるでしょう。

お金の管理方法も雇用契約とは異なってきます。支払う金額に応じて税金を差し引く必要があるのではないでしょうか。また、年が明けた後には税務署への書類提出も求められることがあります。

これらの点については、事前に経理部門や人事部門に確認しておくことをお勧めします。

6. 成果を発揮してもらうための稼働時の判断基準

正社員や派遣社員とは異なる立場で働く副業・フリーランス人材。高い成果を上げ、組織に馴染んで活躍してもらうためには、周りのメンバーの理解と配慮が重要になってくることでしょう。

まず、直接雇用とは異なる働き方をすることを、関係者全員に伝えておくと良いかもしれません。働く時間や曜日を、一緒に仕事をするメンバーが分かるようにしておくことも大切です。

連絡が取れる時間帯を事前に確認しておくと、スムーズに仕事が進むと考えられます。また、最初にメンバー紹介の機会を設けることで、コミュニケーションが取りやすくなるのではないでしょうか。

業務を進める上では、契約書で定めた内容に基づいて依頼を行うようにしましょう。内容に変更がある場合は、その都度確認が必要となります。また、緊急時の連絡先も明確にしておくと安心です。

このように、組織の中で多様な働き方を受け入れ、それぞれの立場を尊重しながら、より良い成果を生み出していける環境づくりが求められているのです。


いかがだったでしょうか。

実は、弊社もメンバーの1/3以上が、副業やフリーランスなどの業務委託人材で構成されており、人事部門を始めとして各チームで試行錯誤しながら、日々ノウハウを蓄積しています。

・これから副業やフリーランス人材を活用したい
・既に活用しているが偽装請負リスクについてもっと知りたい
・より多様な人材がひとつの組織の中で成果をあげるためのポイントが知りたい

などのご要望があれば、人事部門や事業部門向けの研修や、各種フォーマットのご提供等も可能です。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

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