テレワーク企業インタビュー:自律型組織で自由な働き方と高いエンゲージメントを実現する株式会社Synspective
Warisでは各省庁が主催している「テレワーク・デイズ2019」に実施団体・応援団体として参画しました。自社でのテレワーク実施はもちろん、都心に拠点を構える23社で通勤による交通需要を調整する「TDM テレワーク実行委員会」の活動の一環として、23社一斉テレワークを実施するなど、その輪を広げています。(※TDM:交通需要マネジメントー自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化など、「交通需要の調整」を行うことにより、道路交通混雑を緩和していく取組み)
来年の東京2020期間中は交通機関がマヒし、都心への通勤も混乱すると予想されています。来年に向けて、期間中も業務が滞りなく遂行できるよう、テレワークがもっと身近な働き方となるよう、Warisは応援しています。
そこで、今回はテレワークを創業当初から導入している企業Synspectiveで人事を担当する芝 雄正(しば ゆうと)さんにその働き方やポイントについてお話を聞いてみました。
プロフィール
芝 雄正(しば ゆうと)株式会社Synspective HR and PR Manager
京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 修士課程修了。
2014年よりPort Inc.にて人材採用コンサルティング、メディア事業に従事。2015年WASSHA Inc.にて事業企画を経て、エンジニアに転向しタンザニアへ駐在。ソフトウェア開発および事業オペレーション改善をリード。
2018年より衛星画像ソリューション開発のエンジニアとしてSynspective創業期にジョイン。現在は主に人材採用、組織開発、広報を担当している 。
Synspectiveは2018年2月に創業した、衛星データ解析によるソリューション提供および小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うベンチャー企業。宇宙ベンチャー企業でも多くがデータ解析や衛星機器開発など一部に特化するケースが多い中、Synspectiveはレーダー技術を利用するSAR衛星の開発・製造から、衛星データ解析・ソリューション提案までワンストップで行っているのが特徴です。現在、役員含め正社員が約50名、2019年末までに約20名の新規採用を予定するなど急成長中の注目のスタートアップ企業です。
Synspectiveってどんな働き方をしているんですか?
業務委託を含め衛星開発チームが40人、データ解析チーム25人、コーポレートチーム・管理部の10人で構成されています。
コアタイムなしのフレックスタイム制を導入し、もちろんテレワークもOKです。
東京オフィスは清澄白河にありますが、相模原の淵野辺を拠点としている衛星開発チームもあり、実際に部品をさわるような現場での業務が多いです。一方、本社のデータ解析チームはクラウド上での仕事が可能なので、ポジションによってテレワークの頻度ややりやすさには差がありますが、基本的に全員が必要に応じてテレワークをすることが可能な環境です。
ただ、経理や総務など職種的にオフィスで業務をする必要のある役割の方はそのときどきに応じて出社するという状況です。自律的なメンバーが集まる組織ですので、特にどの人が週に何回テレワークを実施したなどの管理はしていません。また、コアタイムがないフレックスタイム制をとっているので、各メンバーがそれぞれパフォーマンスの発揮しやすい時間帯に働いてもらうことができます。
お互いの進捗や状況をシームレスにシェアするコミュニケーションが大事
月に一回は対面で全社会議をし、各チームの進捗状況や課題感のシェアなどを行っています。チーム横断のプロジェクトもあるので、だれがどんなことをしているのか、月1回の会議でシェアをして見える化を図っています。その際も拠点が相模原にある衛星開発チームや、オフィスに出社できないメンバーは「Zoom」というオンライン会議ツールを利用し、自宅や別拠点から会議に参加できる環境を整えています。
社内のコミュニケーションは基本的にスラックを使っています。採用面接も海外の方の場合、すべてオンライン会議で完結しています。お互いのスケジュールもグーグルカレンダーで見えるようにするなど、チームワークに影響しないように事前共有しながら各自タイムマネジメントをしています。
テレワークをする中で課題はありますか?
業務面では完全テレワークの場合、コミュニケーションを十分に取るのがやはり難しい場面があると感じています。ネガティブなことを伝えなくてはいけないときに、細かい感情が適切に伝わりにくい可能性があると思います。
メンバー間の役割分担はそれぞれはっきりしていて、メールや資料作成など作業するだけであればテレワークは便利なのですが、開発チームや新規事業については特にディスカッションが多く、スラックやメールだけでは細かいニュアンスが伝わりづらいことがあります。Zoomなどのオンライン会議ツールはあるものの、フェイストゥフェイスとテレワークを使い分け、実際に会って会議をすることも大事にしています。
また、半年に一度、全社で泊まり込みの合宿もしています。会社のビジョンや方針などを全員で話し合い、理解を深めるようにしています。
労務面では管理をすることが目的になったり、そのために業務が煩雑にならないように、個人の自律性を重んじながら、効率的な労務管理を模索中です。
働きやすい会社にしようと思ったきっかけはありますか?
Synspectiveのカルチャーコンセプトとして「Human Centered Design for Company」という言葉があります。「個々人のパフォーマンスアップを中心として組織を設計する」という意味です。
創業者である新井の過去の経験から、専門スキルをもった人材が一つの組織に縛られずに、複数の企業で働いたりすることができるような、自律的なプロ人材にとって働きやすい会社を創りたいという想いがありました。ですから、現在のような、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入し、もちろんテレワークもOKにしています。
現在、エンジニアが約8割でグローバル人材も採用しており、多様性の尊重や個人の働きやすさにフォーカスしています。私たちが携わる衛星データ事業というマーケット自体がまだ確立されておらず、これから事業を伸ばしていくために各個人のパフォーマンスを最大化することが一番重要です。まだ、何が正解かわからない分野で事業を推進していく中、メンバーが自分の思う仮説にどんどんチャレンジしていってほしい、それを会社がサポートしたいという考えがあります。それが「Human Centered Design for Company」の基礎となっています。会社がメンバーに役割を与えるのではなく、各メンバーが実現したいことが先にあって、会社はその個人の想いと社会とをつなぐ接点になりたいという気持ちがあります。
自由な働き方を取り入れる中で一番気を付けていることは何ですか?
一番重要なのは採用です。自律的でモチベーションの高い人材を採用するようにしています。
Synspectiveは正社員が全員6か月契約なんです。6か月間をベースに目標管理と条件の見直しを前提に採用しています。このため、みなその6か月で成果を出そうとしますし、正社員だからと安定的な環境に甘んじることはありません。
個人と会社がフェアでありたい、対等なパートナーシップを築きたいと思っています。個人が会社に依存するという感覚をなくしたいと思い、このような制度にしました。
もちろん、成果を出した人への評価はしっかりします。実際、6か月契約であるということがわかると、応募してきた人の中には入社を断念する人もいましたが、そこは自社のカルチャーとして貫くことを決めました。結果として、制度をつくってから1年半、今までで退職した人がほぼゼロという実績につながっています。6か月間の契約とわかっていて、それでもジョインしたい、宇宙事業や新マーケットに関わりたい、Synspectiveで働きたい、という強い意思があり、かつ自信のあるメンバーだからこそ、自由な働き方の環境の中で、モチベーションとパフォーマンスを高く維持しています。
あとは、メンバーもパパママ世代が多いので、お互いテレワークで働くことや、こどもの送り迎えに対しても理解があるのは大事ですね。働きやすい会社であることが採用面で大きなフックにもなっています。
テレワークもオフィス出社も自由に「選択」できる環境をつくりたい。
会社が急拡大していて、みな忙しい中お互いの状況が見えにくくなっているという課題がありますが、10月から清澄白河に100名以上収容可能なオフィスに移転しました。
引き続きテレワークも可能ですが、衛星開発チームも新オフィスで勤務してもらう予定のため、「来たくなるオフィス」をテーマとして、チームを越えた密なコミュニケーションがしやすくなると思います。テレワークをしたい人も会社で仕事をしたい人も、自由に「選択」することができる環境をつくっていきたいです。
おわりに
テレワークという制度を導入しても、組織運営がうまくいかないという企業はあると思いますが、Synspectiveは自律的な人材が集まる組織だからこそ、セルフマネジメントが重要なテレワークを自由に取り入れることが可能となっているんですね。そこには、正社員も半年契約という条件を設け、採用時に徹底的に自社に合う人材を見極めるという信念がありました。