大学発スタートアップ企業が取り組むべきビジネスサイドの人材獲得戦略とは?(2022年9月開催イベントレポート)
2022年9月28日に開催したWaris主催ウェビナー「大学発スタートアップならではの必要な人材戦略」の開催レポートをお届けします。
創業まもない時期に多様かつ優秀な人材の獲得を進め、急成長を実現しているソナス株式会社 代表取締役 CEOの大原様と、株式会社アーバンエックステクノロジーズ 代表取締役の 前田様をゲストにお招きし、Waris共同代表 田中のファシリテートで「大学発スタートアップならではの必要な人材戦略」をお伺いしました。
「ビジネスサイドの人材獲得」が成長のカギ
ウェビナーは、大原様、前田様それぞれが創業以来ぶつかってきた人材課題を振り返るところからスタートしました。
技術を起点にスタートしていることの多い大学発スタートアップでは、技術開発職やエンジニア職の人材は、技術の優位性を打ち出すことで獲得ができているそうです。
一方、「技術を顧客価値に結びつけお客様に届けていく段階で必要になる、ビジネスサイド人材の採用難易度は高かった」とお2人は揃って言います。
その理由は、技術職とビジネスサイド人材では惹かれるポイントが異なるからです。
お2人が苦労したと語ったビジネスサイド人材の獲得がうまくいった背景には、2つの価値の言語化がありました。
(1)顧客価値を定義し、言語化する
「プロダクトの価値、社会にどうインパクトを与えていきたいかを経営者自身が言語化できるようになってくると、技術系以外の職種の方にも言葉が届きやすくなりました」(大原様)
(2)ミッションビジョンを言語化する
「創業当初から、ミッションビジョンへの共感を最優先という考えで採用しています。これにより、事業への共感性が高い人に集まってもらえていると感じます。テクノロジーを起点にした会社の場合、創業初期って技術以外に何もない中で優秀なビジネスサイド人材に仲間になってもらおうと思うと、やはりミッションビジョンへの共感が一番の切り札です。」(前田様)
成長のカギとなる人材が持っていた特性は「カオス耐性」
これまでの成長において「キーとなった人材」として、お2人とも、「初期フェーズで活躍したビジネスサイド人材」を挙げました。
その人材の特性とは、具体的には、
・リスクを取ってチャレンジしてくれる
・仕組みやシステムがないことに対して、ないと分かったら自分で作り始める姿勢を持っている
・元々やりたかった仕事に加え、兼務の仕事にも前向きにチャレンジしてくれる
といった動き方が能動的にできる、といったお話をいただきました。
実は、これらの人物像は、弊社で【カオス耐性】と呼んでいる、スタートアップ企業と相性のよいご登録者の特性に共通しています。
このレポートをお読みいただいているスタートアップの皆様であれば、こうした人材は、喉から手が出るほど欲しい!とお考えの方も少なくないかもしれませんね。
スタートアップなら戦略的に活用したい、4つの人材獲得手段
では、大原様と前田様は、どのような人材獲得手段を実践しておいでなのでしょうか。4つの方法を挙げていただきました。
ほしい人材、採用コスト、スピードなどの要素を掛け合わせたときに、どの手段をどう組み合わせるのがよいのか。戦略的に活用するための各手段の特徴や具体的な事例をお話いただきました。
(1)リファラル採用
・大学や株主との繋がりを活かしながら技術職採用に多く活用。
(2)自社ブログ/採用メディアでの発信
・メリットは比較的低予算で広いターゲットに募集をかけることができる点。
・デメリットは、採用が企業のペースで進まない点。
・採用広報の観点からも大事な発信拠点でもある。
(3)人材紹介エージェントの活用
・メリットは採用の加速。
・スクリーニングを終えた確度の高い提案をスピーディに受けることが可能になり、採用に使う時間と労力を抑えられる。
(4)採用だけではない。業務委託でプロ人材の活用
・メリットは変動費で必要なときに必要な分の人材獲得が可能。
前田様は人材獲得の好事例として、創業初期から採用業務をプロ人材にお任せしていた事例を語ってくれました。
「採用メディアの契約、社員へのインタビューと記事化、スカウトの配信まで全部お任せし、創業から約2年間お世話になりました。今は人事を担当するメンバーがおり、内製化できています。
最初の立ち上げを創業者と二人三脚してもらえるプロ人材にお任せするのも良い手だと思います」(前田様)
また、参加者から「他社との競争が激しい汎用性のある人材(ソフトウェアエンジニア等)をどのように獲得しているか?」という質問をいただき、大原様より、事業価値の発信が人材獲得に繋がった事例をご回答いただきました。
「無線の会社なので、外から見るとソフトウェアエンジニアが何をするのか分かりにくい。そこで、ソフトウェアエンジニアの自社での必要性をブログで発信していたところ、事業に関心をもってくれた非常に技術レベルの高い人材が獲得できました」(大原様)
なぜ大学発スタートアップがワークアゲイン人材を獲得したのか
最後は、人材多様性をテーマにお話しました。
そもそも今回、ご登壇いただいた大原様、前田様には、弊社のワークアゲインサービスから人材をご採用いただいた経験があります。
まず、ワークアゲイン人材に興味を持ったきっかけをお話しいただきました。
「創業のきっかけとして、『それぞれの人が自分らしくはたらき、自分らしく生活できる会社をつくりたい』との想いがありました。多様な人が働ける会社を目指していたので、ワークアゲイン人材とのミートアップイベントに興味がわき参加しました。
結果、非常に優秀で、チャレンジ精神や考え方がスタートアップに向いている方に出会えて採用することができました」(大原様)
「私は、大原さんに、こんなサービスがあるよとご紹介いただきました。(大学発スタートアップならではの)先輩からの口コミはとてもありがたかったです」(前田様)
多様なメンバー構成が、事業成長の根幹になった
大学発スタートアップでは、狭い人間関係のなかからスタートすることが多く、学生・院生・研究者などの学内関係者や親族など、メンバーの同質性がどうしても高くなりがちです。
前田様は、人材戦略を考えるときに、多様な視点を取り入れることを、最初から戦略的に意識されていたといいます。
「現在のメンバー構成は、正社員15名のうち20代〜50代まですべての年代がいて、性別も多様です。弊社の事業は街の課題を技術で解くというものですが、そもそも、いろんな人、多様な人が住んでいる都市の課題を解こうという会社が同質性の高いメンバーだったら解けないと思っています。また、都市の課題というのは複雑で、解決まで時間がかかるものが多く、自らが描く理想的な未来からバックキャストして考えないと解決できない課題がほとんどです。
その点で、未来のことを色々な視点で考えられるメンバーがいるからこそできる課題解決があるので、この多様なメンバー構成に助けられています」(前田様)
多様性を力に変えるために一番取り組むべきことは「MVVへの共感」
人材が多様になるほど合意形成に時間がかかるなど難しさが出てくる面もあると思いますが、多様性を力に変えるために留意しているポイントはあるのでしょうか。
「外してはダメなところは、ミッションビジョンバリュー(以下、MVV)。ここに共感できない多様性というのは障壁になる可能性があると感じています。
創業期に、MVVをきちんと言語化してそれを徹底することが大事だと教わっていましたが、当時より今のほうがその大切さが分かってきました。MVVを羅針盤にしていくことは人材多様性のあるチーム作りでも大事なことですね」(大原様)
「わが社ではMVVをメンバー全員で作りました。全員が腹落ちしたうえで、事業計画からOKRの課題管理といった一連の流れを全社的な共通理解としていくと、うまく回るようになっていきました。やはりミッション、ビジョンが共有されていない状態では、事業計画やそれに基づく日々の目標設定に認識のずれが出てしまいます。」(前田様)
また、採用場面でもMVVに従ってカルチャーマッチをしっかり確認していくことも大事なポイントです。
「わが社は採用の際に必ず短期の業務委託からスタートし、お互いにフィット感を確認しあうしくみがあります。
具体的には、副業レベルで週1、フルコミットで週5、いろんなケースがあるのですが、3ヶ月ほどの業務委託をしていただき、しばらく一緒に働いていただきます。その後、社内の採用意思決定機関である採用委員会を設置し、委員全員の合意をもって採用となります。この期間に、候補者の方も、業務委託期間中に、一緒に働く中で合う・合わないを判断でき、フェアな仕組みだと思っています。」(前田様)
多様性を力に変えられる組織を作り上げていくためには、会社のミッションを明示し、共感でベクトルを合わせられる人材に集まってきてもらうことが、今後の大学発スタートアップにおいても大いに学びになりそうです。
まとめ
今回のウェビナーでは、大学発スタートアップ企業の成長に欠かせないビジネスサイドの人材獲得課題を中心に、キーとなる人材の特性や戦略的な獲得手段について具体的なお話を伺うことができました。
技術から顧客価値にブリッジをかけていくフェーズは、事業成長にとっても人材獲得にとっても1つの転機になっている様子がリアルに感じられました。1人ひとりのメンバーインパクトが強いスタートアップだからこそ、戦略的に、かつMVVの求心力を大事に組織づくりを行っていくことが成長を加速させるカギとなりそうです。
Warisでは、今後もスタートアップ企業の成長を支援するための様々なウェビナーを開催していく予定です。お気軽にご参加ください。