節税で税金を安くすることに走ると、お金は貯まりません ~フリーランスの老後 税理士が教える「貯める」ためにできること(1)

フリーランスで仕事をしていくなかで、どうしても付いて回る「お金の不安」。
終身雇用の保証はもちろん、退職金もないフリーランスは、とりわけ将来的なお金の見通しを立てにくく、不安が大きくなりがちです。

キーワードとなるのは「節税」と「制度利用」。レクチャーしてくれるのは、企業をはじめ、多くのフリーランサーのお金の悩みを税務の知識で支える税理士の日下部寿子さんです。

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確定申告前に必死に経費を使う。そんな経験ありませんか?

「今期は利益がたくさん出てしまいそうです。税金を減らすためにどうすればよいですか?」

税理士をしていると、たびたびこのような相談を受けることがあります。所得が増えると税金も多くなるから何とかしなければ! と、確定申告前に必死に経費を使った経験がある人が、読んでくださっている方の中にもいるかもしれません。
みなさんは「節税」をどのようなものだと捉えているでしょうか? 

上記のように、節税=税金を多く払わないことが目的だと考えているのなら、ここでいちど、節税に対する考え方をアップデートすることをおすすめします。

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払うべき税金は割り切って払う。不要な消費は本末転倒

私自身も、勤めていた税理士事務所から独立し、自営業にシフトしたひとりです。そんな私が実感したのが、「税金を抑えるための節税に走ると、結果的にお金は貯まらない」ということ。

節税につながる基本のこと、たとえば小さな経費でも漏らさずに申告することや、青色申告をすることなどは、当然やっておくべきことです。もちろん、受けられる控除はフルで活用しましょう。そうしたうえで、払わなければならない税金は、ある程度割り切ることが大切です。税金を抑えたいがために、不要な消費をして経費をムリヤリ使うのは本末転倒です。いくら税金が安くなっても、手元にお金があまり残らないのでは仕事のモチベーションにもなりません。

目ざすべきは、目の前の税金を安く済ませるための節税ではなく、お金を貯めるための節税です。捉え方をこのようにシフトすることが、長いスパンでお金を貯めていくための、ひとつのポイントになります。

どれだけ稼ぎ、どれだけ使っているのか把握できていますか?

では、将来に備えてお金を貯めるための節税とは、具体的に何をすればよいのでしょうか。

まずは、仕事のお金の管理がどのようになっているのか、現状を見つめ直すことから始めてみましょう。日ごろのお金の管理方法を見直し、整理することが、節税の大切なベースとなります。
決まった額を毎月1度だけ受けとる会社員と違い、フリーランスの収入は安定的ではありません。
そもそもフリーランスのみなさんは、自身がどれだけ稼いでいるのか、そしてどれだけ使っているのかを、常に把握できているでしょうか? 確定申告で書類を作成して初めて「ああ、私ってこれだけ稼いでいたのね…!」と知る人も、意外と多いのではないでしょうか。

節税の第一歩として、まず自身の所得(収入がどれだけあり、経費として使っているのはどれだけなのか)をざっくりとでも把握できるように、月々の事業における収支をきちんと管理することから心がけましょう。

「フリーランスも給与形式」で、使いすぎず把握しやすいお金管理を

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管理の方法としては、私も実践しているやり方をひとつご紹介します。名付けて「フリーランスも給与形式」。簡単に言うと、毎月1度だけ生活費など決めた額を口座から引き出し、残りを事業資金として管理する方法です。

まず、事業用の口座を持っていない人は、この機会にぜひ作ってください。私用の口座と兼用している人もいると思いますが、仕事で得た収入は、それ専用の口座に集約したほうが、断然管理がしやすいです。報酬の振込はすべてその口座にしてもらえるよう指定しましょう。

さらに事業用のクレジットカードをひとつ決めましょう。適当なカードがない場合は新たに事業用として作ると便利です。
事業に関わるキャッシュレスの支払いは基本的にすべてこのカードで行います。そうすることで、カードの明細はすべて事業に関わる経費となりますので、確定申告の際にラクちんですし、経費をどれだけ使っているのかがシンプルにわかりやすくなります。小さな経費でも漏らさず計上できるので、節税にもつながります。

私用と事業用とで同じカードを使っていると、「これは仕事のものだっけ? これはプライベートの買い物だっけ?」などと後で明細を見てもわからなくなり、結果的に経費にしてよいものを計上しそびれることが増えます。これは非常にもったいないです。

仕事の収入を専用口座にまとめ、月に1度生活費を引き出す。事業に関わる支払いはカードで同口座から引き落とす。このシステムにすれば、口座残高を見るだけで大まかな事業収支を簡単に把握できます。稼いだ分だけなんとなく使ってしまうという「使いすぎ」の防止にもなります。そして私だけではないと思いますが、“稼ぎ”が可視化されると俄然「よーし、もっと頑張るぞ!」と力も湧いてきませんか(笑)。

お金が貯められない、収支もいまいちわからない…そんな人はぜひ今すぐ「フリーランスも給与形式」を取り入れることをおすすめします。

※記事の内容は、2019年12月現在施行されている法律に基づくものです。

■プロフィール
kusakabe
税理士 日下部寿子
税理士法人・税理士事務所での8年間の勤務経験に加え、国内生保系資産運用会社の社員として、12年間にわたり、有価証券報告書作成、税務調査及び監査法人監査対応、総務・人事業務などを担当した経験を持つ。2015年、北区赤羽に日下部寿子税理士事務所を開業。会社員経験を活かし、法人・個人事業主の「税務・会計のホームドクター」として、確定申告や相続税に関することから経理に関することまで、幅広く相談を受け付けている。
http://www.kusakabetax.com/

(取材/文/イラスト)横山さと (編集)高橋実帆子


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