なぜ女性役員が少ないのか?理由と解決策について

企業の意思決定層におけるジェンダーギャップは、日本社会が抱える根深い課題です。多様性が企業の持続的な成長に不可欠であると認識されながらも、多くの企業で役員は男性が多数を占めています。

このアンバランスは、単なる機会の不平等にとどまらず、企業のイノベーションやリスク管理能力にも影響を与える重要な経営課題です。

この記事では、多くの女性たちのキャリア支援に携わってきたWarisの視点から、女性役員が少ない根本的な理由を構造的に解き明かし、企業が明日から取り組める具体的な解決策を考えます。

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▼目次
1.  女性役員が少ない現状

2. 女性役員が少ない3つの理由
① 家庭や育児との両立の難しさ
➁ 昇進を阻む、見えない『ガラスの壁』
③ 企業の組織風土とリーダーシップのあり方

3. 女性役員を増やすための解決策
① 職場環境の改善
➁ メンターシップとスポンサーシップの導入
③ ダイバーシティとインクルージョンの推進
④ 意図的に経験を積ませる「パイプライン」の構築を

4. 女性役員増加の重要性と私たちができること


1. 女性役員が少ない現状

日本政府は、企業の女性役員比率を2030年までに30%以上にする(東京証券取引所のプライム市場上場企業が対象)などの目標を盛り込んだ、女性活躍の重点方針案を取りまとめました。

2012年から2022年の10年間で、上場企業の女性役員数は5.8倍に増え、成果は少しずつ上がってきています。ただし、2023年時点では依然として10.6%と低く、諸外国の女性役員割合と比較しても低い水準にとどまっています。

(参照)男女共同参画局・上場企業における女性役員の状況
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html

2. 女性役員が少ない3つの理由

では本題ですが、なぜ日本では女性役員が少ないのでしょうか?その理由として大きく3つ考えられます。

① 家庭や育児との両立の難しさ

まず第一に、家庭の仕事や子育てと仕事を両立することが難しいという点があります。

一般的に、役員の仕事は非常に時間を要し、それに加えて家庭の仕事や子育てをするとなると、多くの女性にとって大きな負担となります。さらに、社会の中には「女性は家庭を優先すべき」という旧来の考え方が根強く残っていることも、女性が役員になることを難しくしています。

これらの問題を解決するためには、社会全体で女性のキャリア支援を進めるとともに、企業も家庭との両立をサポートする環境を整備する必要があります。

➁ 昇進を阻む、見えない『ガラスの壁』

女性のキャリアアップを阻む要因として「ガラスの天井」はよく知られていますが、その手前に存在する『ガラスの壁』も深刻な問題です。これは、男女間で経験できる職務に差が生じてしまう障壁を指します 。

例えば、会社の主軸となり、厳しい交渉や困難な課題解決といった「修羅場経験」が積めるフロント部署に男性が配属されやすい一方、女性はバックオフィスに配置されがち、といった傾向はないでしょうか。

こうした職務経験の差が、昇進に必要なスキルや実績の男女間格差を生み出し、結果として女性が管理職や役員の候補に挙がりにくくなるという構造的な問題につながっているのです。

③ 企業の組織風土とリーダーシップのあり方

企業の組織風土とリーダーシップのあり方も、女性が役員になりにくい要因の一つです。

多くの企業では、長年にわたって男性中心の組織文化が根付いており、このような環境下では女性が上位職に就くことが難しくなっています。

また、リーダーシップのスタイルにも注目する必要があります。女性のリーダーシップの形は、従来の男性型とは異なることが多々あります。しかし、この違いが正当に評価されにくいのが現状です。

結果として、女性特有のリーダーシップスタイルが認められず、役員への登用を妨げる要因となっています。

3. 女性役員を増やすための解決策

① 職場環境の改善

まず一つめは、職場環境の改善です。

女性が役員になりやすい環境を整えるために、企業は職場環境の改善に取り組むことが重要です。具体的には、フレックスタイム制度を設けたり、テレワークの導入といった柔軟な働き方の実現が求められます。また、育児休暇後の復職をスムーズにするための制度も考えられます。

これらの施策により、女性が家庭とキャリアを両立しやすい環境が生まれ、役員として活躍する道が開かれるでしょう。

➁ メンターシップとスポンサーシップの導入

もう一つの方策として、メンターシップとスポンサーシップの導入があります。

メンターシップとは、経験豊富な人材から直接学ぶ制度で、自分のキャリアの進め方や方向性などを相談することができます。一方、スポンサーシップは、役員や経営陣などの上位者が、意欲的な人材を積極的に後押しする制度です。

これらの制度を企業が取り入れることで、女性が自己成長を遂げたり、新たな役職に挑戦するチャンスを得たりすることができます。そして、これが最終的には女性の役員参加を増やす結果につながるでしょう。

③ ダイバーシティとインクルージョンの推進

さらに、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)を推進することも、女性役員の増加に役立ちます。

ダイバーシティは、年齢、性別、国籍、性的指向、身体の能力等、人々が持つ様々な特性や背景を認識し、尊重する考え方です。一方、インクルージョンは、その多様性を活かし、全ての人が平等に参加し、自分の意見を述べ、価値を発揮できる環境を作ることを目指します。

企業がダイバーシティとインクルージョンを真剣に取り組むことで、女性が自分らしく働き、リーダーシップを発揮する場が広がります。そしてそれが、企業の役員にもっと多くの女性を登用するきっかけになるでしょう。

④ 意図的に経験を積ませる「パイプライン」の構築を

女性役員を増やすには、候補者となる女性人材の母集団形成、すなわち「パイプライン」の構築が不可欠です。

重要なのは、多様な業務を経験させる「横の広がり」と、企画・戦略といった上流工程から実行まで一連の流れを経験させる「縦の深さ」を、意図的に積ませることです 。例えば、社内横断プロジェクトや新規事業に女性を積極的にアサインし、事業戦略の立案から関わらせることで、経営視点を持った人材を育成できます 。

また、女性自身が挑戦したいキャリアを積極的に発信し、組織がそれを後押しする文化も重要です 。社内での育成が難しい場合は、外部から経験豊富な女性管理職・役員候補を採用することも有効な選択肢となります。

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4. 女性役員増加の重要性と私たちができること

過去の複数の調査結果から女性役員比率が高い企業は、売上高、利益率、株価など、さまざまな指標で優れた業績を上げていることが示されています。女性役員が増えることは、企業にとって大きなメリットがあるのです。

多様な視点や考え方を取り入れることで、企業はより良い意思決定を行うことができるようになると同時に、リスクを回避することにもつながります。また、女性役員の存在が社内で働く女性たちにとって良いロールモデルとなり励ましにつながるほか、社会全体のジェンダー平等にも寄与します。

私たち一人一人が自分らしく力を発揮できる社会へ向けて、「いま何ができるか」を考え、行動することから始めてみませんか?それが、女性役員が増える未来への一歩となるはずです。

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