7/30(火)「IPOを目指すスタートアップ必見! バックオフィスの内製と外注のバランスをどう考える?」ウェビナーレポート

■ はじめに

2024年7月30日に開催したウェビナー『IPOを目指すスタートアップ向け! バックオフィスの内製と外注のバランスをどう考える?』の概要レポートをお届けします。

内製化によるノウハウ蓄積や競争優位性、外部専門家活用によるスピード感やコスト削減。
「スタートアップは、どのようにこれらを組み合わせるべきか」について、株式会社Tech CFO office 代表取締役社長 松本雄大氏と、株式会社ACNホールディングス 常勤監査役 荒堀敬子氏との対談形式でお届けしました。
内容の一部を抜粋し、お伝えします。


▼目次
1. IPOに向けて必要なバックオフィス体制のポイント
1-1. ・「所有と経営の分離」に必要なコーポレートガバナンス
1-2. ・創業時からIPOに至るまでのバックオフィス変遷

2. バックオフィス人材、どうやって探す?
2-1. ・価値観の共有が大切
2-2. ・バックオフィス外注の選択肢が増えている

3. バックオフィスの内製と外注のバランス、どうする??
3-1. ・どこまで外注できるのか
3-2. ・外注する際に大切なこと

4. Q&A

シード・アーリー期のスタートアップ経営者の方を中心に、IPOを念頭に組織強化に取り組んでいこうとされている企業様のご参考となれば幸いです。


1. IPOに向けて必要なバックオフィス体制のポイント

・「所有と経営の分離」に必要なコーポレートガバナンス

ウェビナーは、ベンチャー企業へのCFO・コーポレート領域のコンサルティングを手掛ける松本様のお話からスタートしました。
社長が創業してからIPOするまで3ステップに分けられると言います。

● 1stステップ:所有と経営の一致
創業時は社長が株主となり会社に資本を入れ経営する。社長は経営の専門家だけど資金には限度がある状態。 
● 2ndステップ:ベンチャー経営の専門家であり、一定の資金力も有しているベンチャーキャピタルが外部株主として入ってくる状態。
● 3rdステップ:IPOを経て、より大きな資金(投資余力)がある機関投資家や一般株主が入ってくる状態。所有と経営が分離されており、①経営の専門能力は低いものの資金力がある株主と②経営の専門家であるが資金力が乏しい経営者が協力をして、会社を成長させていく状態。

「経営の専門能力が低く得られる情報にも限度がある一般株主が、投資先企業のお金の使い方や経営状況についてモニタリングを行うには限界があります。そのためベンチャー企業はコーポレート・ガバナンスの仕組を整備していき、IPO後に一般株主が安心して投資できる状態になっていることが株式市場において求められています。」(松本氏)

・創業時からIPOに至るまでのバックオフィス変遷

では、企業の要であるバックオフィスは、IPOに向けその形や役割がどのように変化していくのでしょうか。
「創業時は社長と阿吽の呼吸で動けるメンバーのみで構成されており、各メンバーに業務を一任して性善説で経営される事が多いです。しかし、事業拡大に伴って組織が大きくなっていきIPOを目指す段階になると、適切に職務分掌の仕組みを設けて性悪説で経営を行うことが求められるようになります(例として、仕事を特定の人に一任せずダブルチェックの仕組を儲ける等)」(松本氏)

その理由は2つ。
● 組織拡大に伴って過去の仕事ぶりを良く知らない人が会社に入社してくる様になると不正リスクが増大する。不正があってもすぐ発見できるような体制であることが求められるため
● 適切に職務分掌を行い1人1人の守備範囲を具体的に定めたり狭めたりすることで、専門性の高いアウトプットが容易になるため 

「IPO後は、人が入れ替わっても継続企業として経営を滞りなく継続していける事が必要になります(=仕組みで経営している状態)。」(松本氏)

2. バックオフィス人材、どうやって探す?

続いて、内部監査体制の構築を複数社で手掛けられてきた荒堀様も加わり、優秀なバックオフィス人材の獲得難易度が年々上がっているなかでの心得について、お話いただきました。

・価値観の共有が大切

スタートアップ/ベンチャー企業の採用手法としてまず挙がるリファーラル採用ですが、職種によって向き不向きがあるそうです。

「職種によって、キャリアの積み上げ方への志向性も異なってきます。特に経理をはじめとしたバックオフィス職種は、安定性が高く居心地の良い会社で長く活躍している方が多いです。
リファーラル採用を狙う前提には、エンジニアやコンサルタントの職種の様に普段の仕事がプロジェクトベースで多数の人とお付き合いしている事が前提になります。バックオフィス職は比較的決まった少ない人数の方と仕事で接する職種になりますので、リファーラルでの採用が比較的難しい職種といえるかと思います。
そのためそうした人材へのアプローチのコツはエージェントとしっかり関係性を作ってエージェントから紹介してもらうことが必要になります。さらに自社から候補者に対して、スタートアップ/ベンチャー企業で働くことの魅力をいかに伝えるかが大事になってきます。」とお2人は言います。

社風に合うのか、価値観やサービスに共感できるかという観点もバックオフィス人材にとっては非常に大きいです。バックオフィスというとつい機能軸に目が行きがちですが、あくまで人なので、価値観の共有が何よりも大切です。」(荒堀氏)

また、弊社田中もお2人の話に大きくうなずきながら、エージェントから見た景色を補足しました。「社会課題への意識が高い方がWaris登録者には多いため、役割を通じて社会課題がどう解決できるかということを、企業に成り代わって丁寧に伝えることを大事にしています。」(Waris田中)

・バックオフィス外注の選択肢が増えている

「スタートアップ/ベンチャー企業の場合はバックオフィスのクラウド活用も進んでいるため、外注という選択肢が広がっています。予算に応じて依頼の仕方は様々。仕事を受ける側のフリーランス人材も増えており、数年間監査法人で経験した後フリーランスとして独立する会計士の方も増えています。会計士や経理職の方は従来自己発信が苦手な方が多かった印象ですが、最近はSNS等で積極発信してフリーランスのCFOやコーポレートスタッフとして仕事を受けている方もいらっしゃいます。」(松本氏)

「コロナを経て、リモートワークを志向する方が増えていることもあり、働き方とのバランスで、フリーランスとして業務委託を受ける選択肢を取る方がとても多くなってきている印象です。」(荒堀氏)

3. バックオフィスの内製と外注のバランス、どうする?

では、バックオフィス機能の外注を検討する場合、内製とのバランスをどのように考えていけばよいのでしょうか?

・どこまで外注できるのか

お2人が揃って挙げたのが、「外注する際、アウトプットのクオリティコントロール機能は社内に持っておく必要がある」ということ。

成果物の品質や納期(リードタイム)、価格などの要素を明確化するのはあくまで発注側の責任であり、そこがふわっとしたまま進んでいってしまうと、双方の期待値がずれていってしまうためです。

また、IPOにおける監査法人、証券会社、証券取引所等々の監査や審査において、バックオフィスの内製・外注を組み合わせること自体は、実際どこまで許容されているのでしょうか?

「上場企業では相当に高い基準が求められることもあり、既に外注は進んでいます。そのためIPO段階においても、品質管理機能が社内にあれば、それ以外は外注が許容されるようになってきているように思います。」(松本氏)

「もともと社員だった方が業務委託に切り替わって継続するケースも増えてきていますよね。そうした意味でも、社員(内製)か外注かという線引きは薄れてきており、それよりも能力のある方にお任せしていて、会社としてコントロール出来ているのか、という本質的なことが求められているように感じています。」(荒堀氏)

・外注する際に大切なこと

とはいえ、実際にIPO準備中のフェーズの企業が、内部監査機能にふさわしい専任者を置けるかというとハードルも高くなります。気をつけるべきポイントについて挙げていただきました。

「最初から人をアサインするのはやはり難しいと思うので、その点は監査役が内部監査をサポートしつつ、担当の方を育てていくみたいなこともあるのかなと思います。その場合は就任前にその方と期待値調整しておくことも必要ですね。」(荒堀氏)

“期待値調整”というキーワードに関連して、松本様からもアドバイスをいただきました。
「創業初期のベンチャー企業と大企業とでは、同じ職種領域でも求められるものが異なります。大企業出身の方は役割分担がはっきりした環境でお仕事をすることに慣れているため、そういう方にベンチャー経営者が最初からあれこれ期待しすぎてしまうと期待ギャップが生じやすくなってしまいます。どういうメンバー構成の中で何の業務を発注したいのか、業務の要件定義設計が重要です。」(松本氏)

経営者と新規採用する人材との間で期待ギャップが生じてしまう理由として、①経営者がコーポレート分野での知見が少ないことや、②IPOが近づいてきているにも関わらず性善説に寄りすぎた組織設計をしてしまっていることも起因しているとのことです。

さらに、お2人からは以下のポイントも挙げていただきました。
● バックオフィスはそもそも専門性の高い職種であるという認識をもつ
● 事業成長に向けて、経営者の限られたリソースをどこに張るかを明らかにする
● 発注する側の発注力向上も大事 まずは少額からでも発注してみて場数を踏んでいくとよい

「IPOを目指すにあたって、専門性の高い人材を獲得して徐々に職務分掌していける事が重要です。職務分掌や外注活用の試行錯誤をしつつ、上手にコーポレート組織を構築できると企業は早く大きくなれると思います。」(松本氏)

適切な人材に適切なボリューム感でミッションを切り出し、どんどん任せていきたいですね。

4. Q&A

最後のQ&Aタイムでは、視聴者の方からいただいたご質問に回答いただきました。

Q.社員数が増えるにつれ、特に労務負担があがっています。労務・給与計算業務における内製/外注の適切なバランスについて教えてください。

A.「まずは3つのTをものさしに標準化を検討してみることをおすすめします。
①Time:作業のペーシングをすること 
②Type:働き方のタイプを棚卸して可能な限り集約・標準化する
③Training:入社パッケージとしてひとまとめで渡せるようにしておく   
併せて、実際に行っている業務を一度棚卸しし、任せる線引きを決めることが大事です。健康保険や健康チェックなど負担の大きい業務なども外注を検討されてみてはいかがでしょうか。」(荒堀氏)

Q. CHROの探し方について教えてください。

A.「まず、採用の仕組や人事制度などを構築するプロジェクト単位で完結するものはプロ人材へ発注することもおすすめです。また、採用や人事制度運用や組織風土を醸成する様な社内外のメンバーとじっくりコミュニケーションを取るポジションの方を求めているとしたら、社長が本当に信頼できる身近な人材をCHROやCHRO候補として登用しつつ、家庭教師役として外部のプロ人材をつけて育成してもらうやり方もあるかと思います。」(松本氏)

まとめ

今回のウェビナーでは、IPOを目指す企業のバックオフィス体制構築・強化について、松本様・荒堀様の豊富な経験にもとづく具体的なお話を伺うことができました。

専門性の高いバックオフィス領域は外注も上手に活用することが、企業の成長を加速させるカギとなりそうです。

Warisでは、これからもスタートアップ/ベンチャー企業の成長を支援するための様々なウェビナ―を開催していく予定です。お気軽にご参加ください。


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