【駐在妻×リモートワーク】キャリアは中断ではなくドリフトへ。海外生活を強みに変える働き方のヒント
パートナーの海外駐在が決まった時、「仕事はどうしよう」「キャリアが途絶えてしまう」と不安を感じていませんか? 現地での就職はビザや言語の壁が高く、ハードルが高いのが現実です。そんな中、場所を選ばない「リモートワーク」が駐在妻の新しい選択肢として注目されています。
Waris代表の田中美和も語るように、キャリアの8割は予想しない出来事で決まるもの(計画的偶発性理論)。 予期せぬ海外駐在は、キャリアの「中断」ではなく、流れに身を任せながら新しい自分に出会う「キャリアドリフト」の絶好の機会かもしれません。
この記事では、駐在妻としてリモートワークを実現するための具体的な方法や、事前に知っておくべき「3つの壁」を解説します。海外生活という変化をチャンスに変え、あなたらしい働き方を見つけるヒントにしてください。
駐在妻がリモートワークを実現する「2つの道すじ」

駐在妻がリモートワークを実現するには、大きく分けて2つの道すじがあります。ご自身の状況に合わせて、どちらが現実的か考えてみましょう。
1. 今の会社の仕事を「海外リモート」で継続する
最も理想的な形です。勝手知ったる職場で、これまでのキャリアを中断せずに働けるため、収入面でも精神面でも安定しやすいのが大きなメリットです。 ただし、後述する「3つの壁」を会社と共に乗り越える必要があり、丁寧な交渉と前例を作る覚悟が求められます。
2. 「新規」でリモート案件の仕事を探す(転職・フリーランス)
退職して帯同する場合は、このパターンになります。 海外からのフルリモート勤務が可能な企業に「転職」するか、Warisがご支援しているような「フリーランス(業務委託)」として、日本の企業から仕事を受注します 。 一度キャリアをリセットすることになりますが、駐在生活という「越境体験」 を機に、より柔軟で自分らしい働き方へシフトチェンジできる大きなチャンスでもあります。
最重要!駐在妻がリモートワークを始める前に知るべき3つの壁
「リモートワークなら簡単」と考えるのは早計です。特に海外からのリモートワークには、法務・税務上の複雑な問題が伴います。知らなかったでは済まされない重要な「壁」について解説します。
①【ビザ・就労許可】の壁:そのビザで働いても大丈夫?
これが最大の関門です。前述の通り、多くの国では帯同ビザでの就労活動を厳しく制限しています。「リモートワークだからバレない」という考えは非常に危険です。たとえ日本の会社からの仕事であっても、滞在国で労働(納税)していると見なされる可能性があります。ビザの規定に違反すると、最悪の場合、国外退去や将来の入国禁止といった重いペナルティが課されることもあります。
ビザの規定に違反すると、最悪の場合、国外退去や将来の入国禁止といった重いペナルティが課されることもあります。
まずは第一歩として、帯同予定国の「大使館の公式ウェブサイト」で、ご自身のビザ(家族帯同ビザなど)の就労規定をご自身で必ず確認しましょう。その上で、会社や専門家(弁護士、ビザコンサルタント)に相談し、正確な情報を得ることが不可欠です。
②【税金・社会保険】の壁:どこに納める?
海外からリモートワークで収入を得た場合、「どの国に税金を納めるのか」という問題が発生します。日本と滞在国の両方から二重に課税される可能性もゼロではありません(多くの場合、租税条約で回避されますが手続きが必要です)。また、日本の社会保険(健康保険、年金)を継続できるのか、それとも現地の制度に加入するのかも、複雑な問題です。会社員として継続する場合は会社と、フリーランスの場合は税理士などの専門家と、必ず事前に確認が必要です。
③【時差・セキュリティ】の壁:どう働く?
法的な問題をクリアできても、物理的な壁があります。日本との時差が大きい場合、会議の時間調整が難しくなります。また、海外の自宅から会社の機密情報にアクセスする場合、情報セキュリティの確保(安全なネット環境、PC管理)が強く求められます。これらをどうクリアするか、会社やクライアントと事前にしっかりすり合わせておく必要があります。
駐在妻がリモートワークを実現するために、今からできる準備

海外からのリモートワークは簡単ではありませんが、不可能でもありません。実現の可能性を高めるために、今から準備できることを始めましょう。
ステップ1:会社への相談・交渉(現職継続の場合)
もし現職を続けたいのであれば、できるだけ早い段階で会社(上司や人事)に相談することが最重要です。
駐在帯同の事情を説明し、海外からのリモートワークが可能か、打診してみましょう。前例がない場合、最初は難色を示されるかもしれません。
その際は、ただ「続けたい」とお願いするだけでなく、
・これまでの具体的な実績
・会社側があなたを失うデメリットと、継続雇用するメリット
・「3つの壁」について、自分でも解決策を調べているという本気度
・(もし会社が難色を示した場合)「正社員」が難しくても、「フリーランス(業務委託)契約」 として継続できないか
といった「会社にとってもメリットがある」という視点で、粘り強く交渉することが鍵となります。あなたが一石を投じることで、会社にとっても「柔軟な働き方」 を推進するきっかけになるかもしれません
ステップ2:どこでも通用する「コアスキル」を磨き、上流工程を目指す
退職して帯同する場合、この期間を次のキャリアに向けた準備期間と捉えましょう。重要なのは、場所が変わっても持ち運びできる「コアスキル」を磨くことです。 「コアスキル」とは、営業、マーケティング、人事、経理など、あなたの「得意」や「強み」となる専門スキルのこと。必ずしもプログラミングなどのITスキルである必要はありません。
特に意識したいのが、単なる作業者で終わらないよう、業務の「上流工程」に関わる視点を持つことです。 例えば、ただSNSを更新する(作業)だけでなく、運用戦略を立てる(上流)。ただ経理入力するだけでなく、業務フローの改善を提案する。 このように「企画・戦略」から携われるよう意識してスキルを磨くことで、帰国後の再就職やフリーランスとしての市場価値が大きく高まります。
ステップ3:「アウェイ」な環境に出て、自分の強みを再発見する
いきなり大きな仕事をしようと焦る必要はありません。まずはボランティアやプロボノ(スキルを活かした社会貢献)など、小さな活動から始めてみましょう。
Waris代表の田中も、かつて自信を失っていた時期に、職場(ホーム)を離れ、ボランティアという「アウェイ」な環境に身を置く「越境体験」をしたことで、自分の意外な強み(言語化力)に気づいたといいます。
日本とは異なる駐在生活(アウェイ)は、新しい自分に出会える絶好の場所です。「私には何もない」と思い込まず、現地のコミュニティに参加したり、小さな役割を担ってみたりすることで、日本では気づかなかったあなたの強みが見つかるかもしれません。
まとめ:キャリアは「はしご」ではなく「ジャングルジム」
駐在帯同によってキャリアが断絶してしまうと、悲観する必要はありません。 女性のキャリアは、一直線に上を目指す「はしご」ではなく、縦・横・斜めと自由に移動できる「ジャングルジム」のようなものです。
駐在生活という「横移動」も、長い人生で見ればあなただけのユニークな経験となり、キャリアを構成する大切な「パーツ」になります。 焦らず、まずは正しい情報を集め、できることから準備を始めてみませんか? その一歩が、あなたらしい新しい働き方につながるはずです。
あわせて読まれている記事
・駐在妻・駐妻の仕事事情~中途採用や転職市場で人気の理由とは?~