チャイルドペナルティとは?出産後の収入減を乗り越え「自分らしく働く」ための対策

ニュースやSNSで「チャイルドペナルティ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。「ペナルティ」と聞くと、何か罰則のような怖いイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、これは出産や育児を機に、経済的な格差が生まれてしまう社会現象を指す言葉です。

「出産してからキャリアが思うように描けない」
「時短勤務で給料が減ってしまい、将来が不安」

といった悩みを感じてはいませんか?

この記事では、チャイルドペナルティの正確な意味や、なぜ日本でこの問題が深刻化しているのか、その背景と私たちを取り巻く現状について丁寧に解説します。言葉の意味を正しく理解することで、ご自身のキャリアや働き方を客観的に見つめ直すヒントになれば幸いです。

1. チャイルドペナルティとはどういう意味?

チャイルドペナルティとは?出産後の収入減を乗り越え「自分らしく働く」ための対策

チャイルドペナルティ(Child Penalty)とは、直訳すると「子供を持つことによる不利益」となりますが、経済学や社会学の文脈では、子供を持ったことによって生じる、女性の所得減少やキャリアの停滞を指す用語です。

具体的には、出産前までは男女ともに同じような所得推移を辿っていたにもかかわらず、第一子の出産を機に女性の所得だけが大幅に下落し、その後も長期間にわたって男性との格差(ペナルティ)が埋まらない現象を表しています。これは個人の能力不足によるものではなく、社会構造や働き方の仕組みによって生じる構造的な課題として注目されています。

2. 日本におけるチャイルドペナルティの現状

世界中で議論されているこの問題ですが、実は日本は諸外国と比較してもチャイルドペナルティの影響が大きい国の一つだと言われています。

「非正規雇用」への移行が招く所得減

日本では、働く女性の数は増えているものの、その約半数が非正規雇用であるという実態があります。 出産を機に、家事・育児との両立を求めて正社員からパートタイムや契約社員へ働き方を変える女性は少なくありません。しかし、日本の雇用慣行では一度正規雇用から外れると元の所得水準に戻ることが難しく、これが長期的な所得格差(チャイルドペナルティ)を固定化させる大きな要因となっています 。

男女の所得格差が縮まらない「L字カーブ」

以前は、女性の労働力率が結婚・出産期に下がる「M字カーブ」が問題視されていましたが、現在は働き続ける女性が増え、このカーブは解消されつつあります。しかし、所得に関しては出産後にガクンと下がり、その後も低空飛行を続ける「L字カーブ」のような推移を描いてしまっているのが現状です。

3. なぜチャイルドペナルティは起こるのか

なぜ、日本ではこれほどまでに根深くこの問題が残っているのでしょうか。

そこには、「育児は女性がするもの」「リーダーは男性が向いている」といった、無意識の思い込み「アンコンシャス・バイアス」も深く関係しています。このバイアスが、女性の挑戦を阻んだり、企業側の評価に影響を与えたりしているのです。

男女のキャリアを分断する「ガラスの壁」

日本企業には、女性が管理部門などのバックオフィスに配属されやすく、男性は営業などのフロント部署に配属されやすいという傾向があります。これを「ガラスの壁」と呼びます。 フロント部署は会社の主軸であり、出世につながる「修羅場経験」を積みやすい環境です。一方で、職種が固定されやすい女性はこうした経験を積む機会が乏しく、結果として管理職への道が遠のき、男女間の経験値と所得に大きな差が生まれてしまうのです。

「長時間労働」前提の評価制度

依然として残業を含めた長時間労働ができる人材が高く評価される傾向も要因の一つです。育児やケアワークを担うことが多い女性は、物理的にこの働き方に合わせることが難しく、キャリア形成において不利な状況に置かれ続けています。

4. チャイルドペナルティに負けない!個人ができる「対策」

国や企業の制度が変わるのを待つだけでなく、自衛策として個人が意識できることもあります。ここでは、キャリアの選択肢を広げるためのヒントを紹介します。

持ち運び可能な「コアスキル」を磨く

ライフイベントによって働き方が変わっても収入を維持するためには、どこでも通用する「コアスキル」を磨いておくことが重要です。 営業、マーケティング、人事など、特定の職種で「自分はこれができる」と言える専門性を身につけましょう。強みとなるスキルがあれば、出産後に時短勤務やフリーランスを選んだとしても、市場価値を落とさずに働き続けることが可能です。

自分の強みがわからない場合は、「越境体験」をしてみるのもおすすめです。 副業やプロボノ、あるいは社内の他部署との関わりなど、普段の職場(ホーム)から離れてアウェイな環境に身を置くことで、客観的な自分の「強み」や「コアスキル」が見えてくることがあります 。

「柔軟な働き方」ができる企業を見極める

ワークライフバランスを保ちながらキャリアを築くには、企業の選び方も重要です。リモートワークやフルフレックス制度などが整っている企業を選ぶことで、育児と仕事の両立がしやすくなります。 また、女性管理職の比率や、多様な人材が活躍しているかどうかも、その組織がチャイルドペナルティに陥りにくい環境かどうかの判断材料になります。

完璧な計画を手放す「キャリア・ドリフト」の考え方

将来に備えることは大切ですが、キャリアの8割は偶然の出来事で決まると言われています(計画的偶発性理論)。 ガチガチにキャリアプランを固めるのではなく、「変化を楽しむ(ドリフトする)」くらいの柔軟な心持ちでいることも、不安を和らげて働き続けるための大切なコツです 。

5. まとめ

チャイルドペナルティとは、出産を機に女性の収入が減少し、男性との格差が固定化してしまう現象のことです。これは個人の努力不足ではなく、性別役割分担の意識や、長時間労働を前提とした社会構造に大きな原因があります。

日本はこの格差が大きい国ですが、男性育休の推進や柔軟な働き方の導入など、少しずつ変化の兆しも見えています。まずは、ご家庭で「家事・育児の分担」や「お互いのキャリア」について話し合ってみることも、ペナルティを解消する第一歩になるかもしれません。

「これからのキャリア、どう描けばいい?」
「今の働き方にモヤモヤしている」

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