プロから学ぶ!エンジニア採用の「3つの壁」を乗り越える方法とは【イベントレポート(2023年1月開催)】

2023年1月25日に開催したWaris主催ウェビナー「エンジニア採用のプロから学ぶ、スタートアップ企業が取るべきエンジニア採用戦略」の開催レポートをお届けします。

今回のウェビナーでは、Warisを通じて数多くのスタートアップ企業の採用支援に取り組んでいるエンジニア採用のプロフェッショナルをお迎えし、日々の取り組みや戦略のポイントをお話しいただきました。

お話いただいた内容の一部を、
【プロから学ぶ!エンジニア採用の3つの壁を越える方法】
にまとめてお伝えします。
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1.母集団形成の壁 ~エンジニアを知る・DLを磨く・潜在層へのアプローチ~
2.採用面接の壁 ~動機づけ、社内エンジニアの巻き込み方~
3.採用後の育成・定着率の壁 ~育成する組織づくり~
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1.母集団形成の壁 ~エンジニアを知る・DRを磨く・潜在層へのアプローチ~

1)エンジニアを知る
採用担当者にとってエンジニア採用が他職種よりも難易度が高いと感じる理由の1つが、職種理解の難しさにあります。そのために、「現場が望んでいる人材像が掴めない」「ターゲットが探せない」といった悩みに繋がります。

まずは、採用担当者が自社エンジニアの仕事を知るためにできることについて、松尾様、川本様が実践していることを、お話いただきました。

多忙なエンジニアに時間を割いて話を聞くことが難しいと感じる場合でも、環境づくりやエンジニア側もメリットを感じられる機会をつくることで、スカウト作成やレジュメの理解に役立つ情報を得ていくことができるといいます。

「オフィスワークをしていたころは、席をエンジニアの近くにして業務をしていました。日常でネタが溜まることで、理解を深めることができました。リモートワークが増えて以降は、チャットツール内のエンジニアのグループチャットに入れてもらうなど工夫をしています。」(松尾様)

「エンジニアをイベントに誘います。一緒にブースを回る間に、日頃の仕事内容や展示されている新しい技術などについて会話をしながら、理解を深めていくことができます。」(川本様)

次に、自社が獲得したいエンジニアについて知るために実践していることを教えていただきました。

「『自社がほしいエンジニアはどんな企業にいてどんな経歴を進んできているのか』というターゲット市場について知っていく必要があります。そのために、ダイレクトリクルーティング媒体などを使ってプール人材のレジュメや経歴をたくさん見ています。
1000人くらいみていくと、企業ごとのエンジニア特性が分かり、ターゲットエンジニアがどこにいるかがみえてきます。」(松尾様)

2)ダイレクトリクルーティングを磨く(顕在層へのアプローチ)
エンジニア採用の主流手法の1つは、ダイレクトリクルーティングです。
スカウトを打っても成果が出ない!との悩みに対して、松尾様はこう言います。

「採用活動量をまずは振り返ってみてほしいと思います。例えばダイレクトメッセージの送付量として1週間に50通で足りていますか?1週間200通送ることを継続していけば届く先のボリュームは大きく変わります。その活動量をまずは実施したうえで、並行してスカウト文面の分析をします。活動量はすぐにできる取り組みだと思います!」
「活動量を確保したうえで、次の打ち手に取り組みます。例えば、年齢の範囲を拡大したり、スキルバーを緻密に調整したり。
求めるスキルを落とす、近しいスキル保有者をターゲットに広げていくことで母集団を増やすことを検討します。」(松尾様)

そして、魅力が伝わるスカウト文を作成するにはエンジニアの協力が不可欠。松尾様からは、どのようにその壁を乗り越えればいいかのアドバイスがありました。

「エンジニアにとっては仕事の優先度として低いので嫌がられがちですよね。そこで、まずリストの中から重要な人材をピックアップしてもらい、その人材に対してのみ、協力を依頼します。その他の人材に関しては、多少訴求は薄くはなりますが、採用担当者が作成します。
繰り返していくと、少しずつ自分でも書ける知識が増えていきますよ。」(松尾様)

3)潜在層へのアプローチ
母集団を増やしていくには転職市場に出ていない人材へのアプローチも有効ですが、実際にはどのように繋がりを作ればよいかは悩ましい点です。
そこで、川本様から「人脈採用」の視点と方法をお話しいただきました。

「私の場合、潜在層へのアプローチの観点では人脈採用を徹底しています。リファラル採用とは異なり、人脈を増やしていくアプローチです。この場合、面接はそもそもしません。
求人媒体のレジュメやSNSなどを使ってめぼしい人材を見つけたら、リサーチをしてコンタクトを取り、イベントへ誘ったり情報交換の機会を持ちます。
2回目ではまたイベントなどにお誘いしながら、その場に自社エンジニアも同席してもらいます。そこで自社の魅力などを伝えることや新しいことへの挑戦意欲を喚起することで、転職に繋げることができています。」

「もう1つのアプローチ方法は、大学の研究室と繋がり共同研究やインターンなどから接点をつくることです。
学会に所属したり論文をリサーチしたりすることで、ほしい技術を持つ人材がいそうな研究室をみつけ、キャリアセンターや知人の紹介などを通じて研究室にコンタクトを取ります。」(川本様)

2.採用面接の壁 ~動機づけ、社内エンジニアの巻き込み方~

2つ目の壁は、面接での動機づけです。動機形成を促していくための面接フローのコツについて、お伺いしました。

「一次面談(カジュアル面談)で人事採用担当者が出る場合、企業風土や働き方などソフト面を伝えて動機づけを行うことが目的になるので、まずはその点をしっかりと語れるようにならなければいけないと思います。
しかし実は今は、カジュアル面談さえもエンジニアに参加してもらうように依頼しています。
最近のエンジニアの志望動機は、「開発環境はどうなのか」「スキルアップ・成長・チャレンジができるのか」を重視する傾向が強いと感じています。よって、人事が一次面談でそれらに応えられないと、マイナスポイントになるということが顕著にでてきています。」(松尾様)

重要なのは社内エンジニアをどう面接フローに巻き込むか?
お二人からは、気持ちよくエンジニアメンバーに採用支援をしてもらうための工夫や経営層、そして会社全体の巻き込みの大切さについてアドバイスがありました。

「カジュアル面談に対して、30分だけ、エンジニアメンバーに順番に対応してもらえるように頼んでいます。最初にしっかりと動機づけをして選考に進んでもらえるフローを最近はつくっています。」

「採用担当者の依頼だけではたしかにコミットしてもらうのは難しい面もあります。そこで1つの事例としては、経営陣と話し合って、エンジニアの業務の1つとして採用活動を評価の1項目においてもらうなどの工夫をしたことがあります。タスク・義務として行うことでコミットメントは高まります。
実際やり始めてもらうと、エンジニアの方々も次の選考に進んでもらいたいと能動的に試行錯誤をして関わってくれていました。」(松尾様)

「私が企業に関わる際に、最初に経営層にお願いしていることは、社員全員がリクルーターだという考え方で採用活動に取り組みましょうということです。
このメッセージが社員一人ひとりに浸透していると、おのずと面談参加への動機づけができている状態がつくれます。
SNS戦略も採用戦略と紐づけて組み立てているので、SNS流入の候補者はエンジニアメンバーの間接的な知り合いだというケースも多いです。すると、よりエンジニアメンバーの関心度合いも高まり、協力的になっていただけます。」(川本様)

「積極的な協力が引き出せないと思える人に対しては、採用した結果生まれる成果について話すようにしています。『この採用がうまくいけば、あなたの仕事がうまく回るようになるよ』といった感じです。」(川本様)

3.採用後の育成・定着率の壁 ~育成する組織づくり~

スキルバーを広げてジュニア層や未経験者を獲得した場合、採用後の育成環境づくりも大きな課題です。
大手企業のような育成体制が整いづらいスタートアップのなかで、既存エンジニアメンバーがメンバー育成のスキルを向上させるためのヒントについてもお伺いすることができました。

「スキルマップを使うことをお薦めしています。会社が必要なスキル、本人が目指したいレベルなどの目標を確認し、到達までのステップを育成側と本人の双方が理解します。勉強していくステップと自身のキャリアステップの両方を明確にしてあげることが重要です。
特に未経験者には、スキル習得のための講師やメンターをつけることやキャリアコンサルタントのようなキャリア面からのサポートもしながら育てていくことが大切です。
この体制を自社だけで整えるのは大変ですので、適宜外部を利用していくことも選択肢に入れておくとよいと思います。」

「ほかには、ロールモデルを社内外で探し、どんな人になりたいのかを明確にさせましょう。ロールモデルの人が辿ってきた経歴や勉強範囲が参考になり、自身が次にやりたいことが見えてきたり、やる気の引き金になったりします。
育成側は、このような方法を用いながら本人の思考を引き上げるような関わりをしていくのが良いのかなと思います。」(川本様)

まとめ

今回のウェビナーでは、採用プロフェッショナルのお2人から、スタートアップならではのエンジニア採用の実践知を具体的にお伺いすることができました。

登壇いただいた2名のプロフェッショナル
・松尾香里様(フリーランスリクルーター)
フリーランスリクルーターとして10年間で7社の採用支援を行い、現在は株式会社JiJ様にて採用担当者としてご活躍中

・川本優子様(S’APPUYER Consulting合同会社 代表CEO)
IT人材サービス業界やIT企業での人事部でのエンジニア採用の経験を経て独立され、現在は人事・採用コンサルタントとしてご活躍中

Warisでは、今後もスタートアップ企業の成長を支援するための様々なウェビナーを開催していく予定です。お気軽にご参加ください。