社外取締役をめざす女性向け 職務経歴書の作成ポイント
この数年、ESG、SDGsの観点などから、社外取締役としての女性人材の活用ニーズが高まっています。
女性の割合が増えることで社外取締役の多様性が高まり、企業のガバナンス強化や企業信頼度向上につながることが期待されているのです。
そこで今回は、社外取締役を目指す女性に向けて、職務経歴書の作成ポイントをお伝えします。
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2. ESG・SDGsのニーズに合わせた専門性・スキルの可視化
例1. 管理職・役員の経験
例2. 起業経験
例3. 研究歴・資格
3. 実践!職務経歴書のブラッシュアップ法
4. 社外取締役として自分だからできること
1. 社外取締役として求められる役割
企業が社外取締役を選ぶ際に重視するのは、もちろん、性別の多様性だけではありません。専門分野・スキルの多様性の視点でも、社外取締役としての適性を見定めています。
実際に、経済産業省の社外取締役ガイドライン(※1)によると、「性別や国籍の多様性にとどまらず、専門分野やバックグラウンドの多様性も考慮し、社外取締役全体として必要なスキルセットの確保が重要」と明記されています。
つまり、異なる業界経験や、異なる専門性・スキルを持つ人材が集まり、強みを組み合わせることにより、社外取締役としての総合的な価値を発揮することが期待されているのです。
企業によっては、スキルマトリックス表を作成し、社外取締役のスキルの多様性を対外的に発信しています。
今後、社外取締役としての実績を増やしたい方にとっては、専門性やスキルを整理し、「どの分野に強いのか、どのように貢献できるのか」をレジュメで具体的に明示することで、お仕事により近づく、と言えるでしょう。
つまり、スキルマトリックス表の中で、どの項目に自分が該当するのかを、企業が判断しやすいように、伝えていくということです。
企業によって求めるスキルは異なりますが、多くの企業で求められるスキルには以下のようなものがあります。
■ スキルマトリックス表の事例
※出所:複数の企業の事例を参照し、Warisキャリアカウンセラー島谷美奈子が作成
また、前述の社外取締役ガイドラインによると、企業が社外取締役に求める役割は、以下となっています。
① 経営戦略・計画の策定への関与:54%
② コンプライアンス・不祥事対応への関与:34%
③ 利益相反管理への関与:14%
④ 経営陣の指名・報酬プロセスへの関与:7%
⑤ 個別の業務執行への関与:5%
レジュメ作成時は、「どのように経営に関わることができるか」、という視点でも作成する必要があります。
職歴やスキルをただ羅列しただけでは、転職希望やフリーランスの仕事獲得時希望者と判断されてしまう可能性もあります。企業ニーズに合わせた、ブラッシュアップが必要です。
2. ESG・SDGsのニーズに合わせた専門性・スキルの可視化
2021年6月、上場企業における行動指針であるコーポレート・ガバナンスコードが改定され、取締役会が担うサステナビリティに関する具体的な役割が明記されました。
環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理等です。
サステナビリティについては、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国内でも浸透し、企業は、個別に優先的に取り組む具体的なゴールを設定しています。(※2)
また、ESG投資とは、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資のことを言いますが、2015年に国連責任投資原則(PRI)に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名したことで、日本でも広がりを見せています。 (※3)
これらを踏まえて、ご自身の専門性・スキルの伝え方をブラッシュアップしてみましょう。
■ 例1. 管理職・役員の経験
女性管理職や女性役員のパイオニアとして、実績を積んできた女性の中には、仕事と家庭の両立経験をPRし、働く女性を後押ししたいとおっしゃる方も少なくありません。
けれども、企業における人材に関する課題は、女性の活用だけではありません。
定年延長に伴うシニア層の育成・活用や、ダイバーシティ経営施策に伴う外国籍人材や障害者の活用、性別に関わらず介護や育児と仕事を両立する人の活用等と、多様な人が働き続けるための労働環境の整備が求めれているのです。
さらに、サプライヤーを含めた人権問題の対応等の課題にも直面しています。
「働く女性が少数派であった環境において、多様な人が働き続ける労働環境の活用と整備を行いながら、実績を出してきた」とPRしてはいかがでしょうか。
そうすることで、企業からは、多様な人材の活用提案や、労働環境の整備に強いESG・サステナビリティ人材としても捉えられるでしょう。
■ 例2. 起業経験
起業経験から、経営者としての経験をPRする方もいらっしゃいます。けれども、特に大企業においては、従業員人数や売上規模の違いから、経営経験とは認識していないこともあります。
それよりも、新規事業として事業を起こした経験を強みと捉える傾向があります。企業は、事業継続を行うために、イノベーションを起こし続け、ビジネスモデルの変革を行うことを迫られているためです。
事業を起こす際のアイデアの具体化が得意なのか、マーケティング知識を活かしたサービス設計が得意なのか、アライアンスの経験が豊富なのか、ITビジネスの立上げが得意なのか等を具体的に明示するとよいでしょう。
そうすることで、企業からは、事業戦略に強い人材やITビジネスに強い人材等として捉えられるでしょう。
■ 例3. 研究歴・資格
大学院の研究歴や、研究者としての実績、MBA資格をPRする方もいらっしゃいます。その際は、企業経営にどのように貢献できるかを、具体的に添えて伝えたほうが良いでしょう。
例えば、研究成果が製品開発に結び付いた実績、企業や行政との協業プロジェクトの実績、資格取得後に関わった事業推進の実績等です。
そうすることで、企業からは、研究開発結果や資格知識を、事業戦略や経営戦略に活かすことができる人材として捉えられるでしょう。
3. 実践!職務経歴書のブラッシュアップ法
それでは、具体的に職務経歴書の作成について、見ていきましょう。
■ レジュメ見本事例
※出所:Warisキャリアカウンセラー 島谷美奈子作成
【要約】
職務経歴を端的にまとめて記載します。
新卒時代からの経歴を順番通りに記載するのではなく、「経歴のまとめとポイント」を記載します。
まず一行目は専門性・スキルがすぐにわかるように、業界・職種の特性を記載しましょう。「〇〇業界にて約〇年、営業・事業戦略を担当し、海外拠点立上を経験」「主にIT業界にてマーケティング経験を積み、複数の新規事業を担当」等です。
続いて、職歴の中から主な実績を記載し、最後に最近の状況を記載します。社外取締役や社外アドバイザー等の経歴も添えましょう。
【職務経歴】
これまでの職務経歴を具体的に記載します。
最近の職歴を上部に記載し、最下段が新卒時代の職歴となる、[逆年代式]に記載するか、同じ職種ごとに表などにまとめて記載する[キャリア式]にて記載しましょう。
その際には、企業の売上規模や従業員規模、マネジメント人数や、担当したプロジェクトの期間等、数値化できるものは具体的に記載してください。目標達成率、売上がどの程度増えたのか等の実績も記載しておくと良いでしょう。
主な実績は、単語ではなく文章でプロセスを添えて記載しておくと伝わりやすいでしょう。経営視点を持つことを示すため、コンセプチュアル・スキル と言われる戦略立案や中長期の視点、課題解決の実績を意識して記載してください。
職歴が多いという方もいらっしゃると思いますが、専門性・スキルに関わる経歴や実績は厚く、そうではない経歴は簡単に記載するなど、強弱をつけることで文章量をコントロールしてください。
【社外役員・社外アドバイザー等の経歴】
既に社外役員のご経験をお持ちの方は記載して起きましょう。行政や団体等で専門性を活かして外部員として活動した経験なども記載しておいてもよいでしょう。
【取得資格】
資格は正式名称と取得時期を掲載しておきましょう。
【自己PR】
仕事のやり方や人との関わり方であるヒューマン・スキル 、業界を超えても発揮できるポータブルスキルを記載しておきましょう。
例えば、プロジェクトマネジメント力、リーダーシップ、業務改善力、課題解決力、企画力等です。具体的なエピソードを記載し、それを説明するとしたらどのようなスキルか、という観点で考えても良いでしょう。
4. 社外取締役として、自分だからできること
社外取締役は、経営に関わる助言や、経営陣への評価や指名・再任の決定まで関わる責任がある役割です。そのため、企業の置かれた状況を把握し、情報収集や関係構築等に努める必要があります。
同時に、社外の専門家として、新たな視点で、企業の経営戦略に関わり、企業の持続的成長に貢献することも期待されています。
社内取締役ではなく、社外取締役として、自分だからできること、自分でなければできないことは何か、ご自身のアイデンティティと市場ニーズを深堀りし、独自の強みを企業の持続的成長ために役立ててください。
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https://waris.co.jp/service/waris-executive
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島谷美奈子
Warisワークアゲインエデュケーションプランナー、Warisキャリアエール担当カウンセラー。人材ビジネス業界にて長年人材活用支援・キャリア支援に従事。若手からエグゼクティブ層まで延べ6000名以上のカウンセリング実績を持つ。国家資格キャリアコンサルタント、プロティアン認定ファシリテーター。専門はサステイナビリティ学、人的資源管理、ダイバーシティ&インクルージョン。
※出所
(※1)経済産業省「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」(2021年7月31日)
(※2)外務省ホームページ SDGsとは
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
(※3)経済産業省ホームページ ESG投資
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html