テレワーク廃止で起きた4つの誤算——「時代遅れ」判断が招く組織リスク

「テレワークは時代遅れ」と判断して出社回帰に踏み切った企業が、その後に想定外の問題を抱えるケースが増えています。

採用候補者の辞退が増えた。優秀な社員がひっそりと転職活動を始めた。業務委託で協力してくれていた外部の専門家が離れた——。出社回帰の判断そのものが問題なのではなく、「テレワーク=時代遅れ」という短絡的な評価を根拠にした場合に、こうした誤算が起きやすくなります。

本記事では、テレワーク廃止後に企業が直面しやすい4つの具体的なリスクと、働き方の設計を見直す際に人事・経営が押さえるべきポイントを整理します。

テレワーク廃止後に起きやすい4つの誤算

誤算① 採用競争力が想定以上に落ちる

求職者にとって、勤務形態は給与水準と並ぶ重要な条件です。テレワーク可否が求人票に明記されるようになった今、「原則出社」への転換は事実上の条件改悪として受け取られます。

特に影響が大きいのが、転職市場で引く手あまたなミドル・ハイスキル層です。複数の選択肢がある人材ほど、柔軟な働き方を提供している競合企業を選びます。「テレワーク廃止を機に転職した」という層が一定数存在することは、採用担当者なら肌感覚で理解しているはずです。

誤算② 既存の優秀人材が静かに離れていく

テレワーク廃止の発表後、目立った反発もなく受け入れられたように見えても、その後じわじわと優秀な人材が退職するケースがあります。

声を上げないまま転職活動を進めるのは、むしろ市場価値が高く「辞めても困らない」層です。テレワーク廃止が直接の引き金になるというより、「この会社は社員の働き方より管理のしやすさを優先するのだ」という判断が、離職の後押しになります。連鎖退職の引き金になるリスクもある、見落とされがちなポイントです。

誤算③ 外部人材・プロ人材との協働が難しくなる

テレワーク廃止のもう一つの盲点が、外部人材との関係への影響です。フリーランスや業務委託のプロ人材の多くは、リモートを前提に複数社と並行して稼働しています。「原則出社」を求める企業からは自然と離れていきます。

社内リソースが手薄なポジション——マーケティング、広報、人事、経営企画など——に即戦力の外部人材を起用しようとしても、出社必須の条件では候補者の母数が大幅に減ります。テレワーク廃止が、外部人材活用という人材戦略の選択肢を同時に狭めるリスクがあることは、あまり議論されません。

誤算④ 「廃止」したのに生産性が改善しない

出社回帰の理由としてよく挙げられるのが「コミュニケーション不足の解消」「生産性向上」です。しかし、テレワーク下での生産性低下の多くは、場所の問題ではなく業務設計・評価制度・マネジメントの問題が原因です。

出社に戻しても根本的な設計が変わらなければ、生産性は改善しません。「廃止したのに変わらない」という状況が続くと、現場からの不満が高まり、マネジメントへの信頼低下につながります。

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「時代遅れかどうか」より先に問うべきこと

テレワークを廃止するか継続するかは、本質的には経営判断の問題です。ただし、その判断の根拠が「時代遅れだから」「大手が出社に戻したから」という感覚論である場合、上記の誤算に陥るリスクが高まります。判断の前に整理すべき問いは、以下の3点です。

①生産性低下の原因は本当に「テレワーク」か
コミュニケーション不足・評価制度の機能不全・マネジメントの属人化など、出社に戻しても解決しない問題を「テレワークのせい」にしていないか確認する必要があります。

②出社回帰で採用・定着にどう影響するか試算しているか
採用候補者の辞退率・既存社員の離職意向・外部人材の確保難易度を、出社回帰前後で比較する視点が必要です。感覚でなく数字で見ると、判断が変わるケースがあります。

③「どこで働くか」より「誰が何を担うか」を整理しているか
働く場所の議論の前に、どの業務を社内人材が担い、どこを外部人材に委ねるかという業務設計の整理が先です。この設計がないまま出社回帰を決めると、組織の非効率が場所を変えて再現されるだけです。

採用・育成・組織課題、プロ人材が力になります

テレワークを「武器」にしている組織の共通点

出社回帰が進む中でも、テレワークを積極的に維持・活用している企業には共通する発想があります。「どこで働くか」ではなく「どんなスキルを持つ人が業務を担うか」を先に決め、その結果として働く場所が決まるという順序です。

この発想のもとでは、社内人材だけで組織を完結させる必要がなくなります。日本経済新聞(2023年10月)が報じているとおり、大手企業でも経営企画・人事・新規事業開発といった中枢領域でプロ人材を活用する事例が広がっています。リモートを前提に即戦力の外部人材を起用することで、採用コストを抑えながら必要なスキルを機動的に調達できるのが、こうした企業の強みです。

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まとめ:廃止の前に、設計を問い直す

テレワーク廃止は、それ自体が悪い判断ではありません。ただし「時代遅れだから」という感覚論を根拠にした場合、採用競争力の低下・優秀人材の離職・外部人材確保の難化・生産性の非改善という4つの誤算が起きやすくなります。

出社かリモートかという二択で考える前に、自社の業務設計・人材調達戦略・評価制度を一度整理することが、判断の精度を上げる近道です。

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