育休の「しわ寄せ」はなぜ起きる?原因と対策を解説
「気づいたら、育休を取った社員の分の仕事を、周りのメンバーがなんとなくカバーしている」——多くの企業で、こうした状況が起きています。しかし、その「なんとなく」の負担が積み重なると、しわ寄せを受ける社員の疲弊、チーム全体のパフォーマンス低下、そして離職リスクにまで発展しかねません。
本記事では、企業の人事・経営層の方に向けて、育休による「しわ寄せ」がなぜ発生するのか、その根本原因を整理したうえで、組織として取るべき具体的な対策をご紹介します。
1. 育休の「しわ寄せ」はなぜ起きるのか

■ 属人化した業務は、引き継げない
多くの企業で、育休対象者の担当業務は本人にしかわからない「属人化」した状態になっています。マニュアルや業務フローが整備されていない場合、周囲のメンバーは業務内容を正確に理解できないまま、負荷だけを引き受けることになります。特に、取引先との関係構築や独自の判断基準が絡む業務ほど、この傾向は強くなります。
■ 派遣・社内異動では埋まらない専門業務
広報、マーケティング、事業企画など専門性の高いポジションほど、一般的な人材派遣ではスキルの合う人材が見つかりにくく、「結局、社内でカバーするしかない」という判断に至りがちです。定型業務であれば派遣で対応できても、非定型かつ専門性の高い業務は、そもそも「代わりが見つからない」という構造的な問題を抱えています。
■男性育休の広がりで、対象範囲が拡大している
2023年から男性育休の取得状況公表が義務化された大企業では、平均取得率が46.2%に達している一方、企業規模を問わない全体では17%にとどまっています。民間調査では、同僚への負担が育休取得時の懸念として挙げられており、中小企業では仕事の分担や代替要員の確保が大企業よりも難しいと指摘されています(日本経済新聞 2023年8月12日付記事より)。今後、性別を問わず育休取得が一般化するほど、管理職やリーダー層も含めて「しわ寄せ」が発生する場面は増えていくと考えられます。
■ 相談しにくい職場文化も一因に
「配慮してもらって当然だと思われたくない」というプレッシャーから、育休取得者本人が周囲への影響を過度に気にしてしまうケースも少なくありません。お互いに気を遣い合う職場ほど、しわ寄せの実態は表面化しにくく、対応が後手に回りがちです。
2. 「しわ寄せ」を放置するとどうなるか
しわ寄せを受けた社員の不満は、本人が声を上げない限り経営層には見えにくいという特徴があります。日々の業務に忙殺される中で、「自分だけが割を食っている」という感覚は徐々に蓄積し、次のような形で表面化します。
・モチベーションの低下、業務品質の悪化
・周囲への不満や、休業者本人への感情的なしこり
・最終的には、負担に耐え切れなくなった社員の離職
特に、もともとリソースが逼迫しやすいバックオフィスや専門職ポジションでは、一人の離脱が業務全体の停滞に直結しやすく、注意が必要です。
さらに厄介なのは、こうした不満が一人の離職で終わらないケースです。一人が抜けた分の業務が、残ったメンバーにさらに再配分され、次の離職者を生む——という悪循環に陥る企業も少なくありません。育休取得者本人だけでなく、周囲のメンバーが安心して働ける環境を維持できているか、人事・経営層が定期的に点検すべき視点です。
こうした業務体制の見直しについては、Warisの企業向けサービスページで具体的な取り組み例をご紹介しています。
3. 企業が取るべき対策

■ 業務の仕組み化・属人化の排除
育休の予定が判明した時点で待つのではなく、日頃から「一人しかできない業務」を可視化しておくことが重要です。業務マニュアルの作成、判断基準のドキュメント化、定期的な業務の相互バックアップ体制などを整えておくことで、急な休業にも対応しやすくなります。特に中小・ベンチャー企業では、一人が複数の役割を兼ねているケースが多いため、優先度をつけて段階的に仕組み化を進めるのが現実的です。
■ 引継ぎ期間の設計
育休開始の1〜2ヶ月前から並走期間を設け、業務の進め方や判断基準を共有する時間を確保しましょう。引継ぎが不十分なまま休業に入ると、残されたメンバーが手探りで対応せざるを得なくなり、結果的にしわ寄せが増大します。引継ぎ資料の作成だけでなく、実際に一部業務を並行して担当してもらう「実践型」の引継ぎが効果的です。
■ 業務量そのものの再配分・可視化
「誰が何をどれくらい担っているか」が見えていない状態で欠員が出ると、負荷は声を上げない人・断れない人に偏りがちです。育休発生時には、既存業務の優先順位を見直し、一時的に停止・簡素化できる業務がないかを棚卸しすることも、しわ寄せを軽減する対策の一つです。
■ 一時的な戦力補強という選択肢
社内のリソースだけで乗り切ろうとすると、負荷は必ず特定のメンバーに集中します。育休期間に限定して外部の専門人材を活用し、一時的に体制を補強するという発想も、有効な対策の一つです。実際には、フルタイムでの人員補充だけでなく、「週2〜3日稼働」「特定プロジェクトのみの担当」といった柔軟な契約形態を選べるケースも多くあります。社内の負荷状況に応じて、必要な稼働量だけを補うという発想が可能です。
4. プロ人材活用という選択肢
外部人材の活用と聞くと「人材派遣」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、専門性の高い非定型業務については、業務委託形式で稼働する「プロ人材(フリーランス)」という選択肢も広がっています。
日本経済新聞の報道によると、プロ人材への依頼は以前は社内システムの構築など、社員に不足する知識を補う業務が中心でしたが、近年は「採用・育成(27%)」「中期経営計画・組織戦略策定(25%)」「人事制度・設計、労務(21%)」といった、組織の中枢に関わる業務での依頼が増えているといいます。育休代替という文脈にとどまらず、経営に近い領域でプロ人材を活用する企業が増えているのです。
実際に、産休・育休の代替としてプロ人材を活用した企業では、単なる「穴埋め」ではなく、業務の仕組み化や新しい視点の導入まで実現したケースもあります。Waris(ワリス)では、26,000名以上のプロ人材データベースから、御社の課題や欠員となるポジションに合わせた人材をご紹介しています。
5. まとめ
育休による「しわ寄せ」は、属人化した業務体制や引継ぎ不足、業務量の可視化不足が根本原因です。放置すれば残されたメンバーの疲弊や離職につながりかねませんが、業務の仕組み化・引継ぎ設計・業務再配分、そして必要に応じた外部プロ人材の活用によって、十分に防ぐことができます。
「しわ寄せ」が起きにくい組織づくりについて相談したい方は、お気軽にご相談ください。
よく読まれている記事
・育休代替要員がいない!派遣で見つからない「エース社員」の穴を埋める、第3の選択肢とは?
・経理の人手不足をどう解決する?今すぐ使える対策と外部活用の方法
