転勤制度の廃止が広がる理由と人事に求められる視点
近年、大手企業を中心に「転勤制度の廃止・見直し」が相次いで報じられています。人事院の調査では企業のうち43.2%が転勤制度を設けており、従業員500人以上の企業では77.7%に上るとされ、多くの企業にとって転勤は今も重要な人事施策です。
一方で、共働き世帯の増加や従業員の価値観の多様化により、「このまま制度を維持してよいのか」という問いが人事・経営層に突きつけられています。本記事では、転勤制度見直しの背景と実際の企業事例、そして見直しを進める際に人事担当者が直面しやすい課題について整理します。
1. 転勤制度を見直す企業が増えている理由
転勤制度見直しの背景には、家族形態の変化が大きく影響しています。1990年以降、共働き世帯数は片働き世帯数を上回り、2022年には70.1%の世帯が共働きとなりました。
夫婦のどちらかが転勤に帯同する場合、もう一方はキャリアを中断せざるを得ないケースも多く、配偶者の転勤に伴い妻が離職するケースは年間約2万件にのぼると推計されています。
こうした状況を受け、転勤の有無が入社や離職の意思決定に大きな影響を及ぼすようになっており、採用競争力や定着率の観点から、転勤制度は「見直すべきリスク」として捉えられ始めています。特に若手層の採用では、転勤の有無が応募のハードルになるケースも珍しくありません。
2. 転勤制度に潜むリスクと従業員への影響

転勤制度が抱えるリスクは、離職や採用面だけではありません。厚生労働省の調査によると、企業が負担する単身赴任手当は1人あたり平均月額47,600円とされ、コスト面での負担も小さくありません。
育児・介護と仕事の両立を目指す従業員にとって、転居を伴う異動は大きな負担となります。特定の社員に業務が集中する「しわ寄せ」の問題や、急な人事異動によるチーム力の低下も、現場マネージャーが直面しやすい課題です。
また、法的な観点も見過ごせません。最高裁判例(東亜ペイント事件)では、就業規則に転勤の定めがあり実際に転勤の運用実績がある場合、個別の同意がなくても転勤命令は有効とされましたが、近年は育児・介護に対する社会的な認識が変化しており、育児介護休業法の改正もあって判定基準は厳しくなりつつあります。「規則にあるから命じられる」時代から、「合理性を説明できるか」が問われる時代へと変わりつつある点は、人事として押さえておきたいポイントです。
3. 転勤制度を廃止・見直した企業の事例
実際に転勤制度の見直しに踏み切った企業は増えています。保険大手のAIGグループは2019年4月、会社都合による転居を伴う転勤を廃止し、社員が希望勤務エリアを選択できる仕組みに変更しました。
NTTグループは、テレワークを基本とし転勤や単身赴任を原則廃止する方針を掲げ、従業員が希望する場所で働けることを目指しています。このほかにも、JTB、富士通グループ、カルビーなど業種の異なる企業が同様に転勤制度の見直しを公表しており、特定の業界に限らず幅広い企業で検討が進んでいることがうかがえます。
こうした動きは、従業員のウェルビーイングと企業の採用力強化を両立させる施策として注目されています。
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4. 見直しを進める際に人事が直面する課題
一方で、転勤制度の見直しは慎重に進める必要があります。転勤制度は各地域への人員補充や従業員の人材教育手法として、企業にとって必要な制度として導入されているため、廃止によって特定拠点の人員不足や、経験豊富な人材の育成機会の減少といった副作用が生じる可能性があります。
「転勤ありき」の人員配置を前提としてきた組織ほど、代替の人員調達手段をどう確保するかが実務上の大きな論点となります。特に地方拠点や、特定の専門知識が必要なポジションでは、社内異動に代わる人員確保の選択肢を事前に用意しておくことが重要です。
特に、拠点間の人員バランスや専門知識の継承をどう担保するかは、見直しを検討する企業からよく挙がる懸念点です。すべてを一律に廃止するのではなく、勤務地限定コースの新設や、本人の希望に応じた異動選択制度など、段階的に選択肢を広げていくアプローチも現実的な選択肢となります。
5. 代替策としての「プロ人材」活用という選択肢

転勤による人員補充が難しくなる中、注目されているのが業務委託形態で専門人材を活用する「プロ人材」の活用です。特定の勤務地に縛られず、リモートでも高いスキルを発揮できる人材を、必要な期間・業務範囲でスポット的に迎え入れることで、拠点をまたぐ人員の「穴」を埋めながら、社内では得にくい専門性を取り込むこともできます。
実際に、こうした業務委託型のプロ人材紹介サービスでは、書類選考や面談を経て契約に至る候補者の一次面接通過率が平均17%程度と、専門性やマッチ度を重視した選考が行われています。また、契約後の継続率は98%に上るというデータもあり、単発の穴埋めではなく、中長期的に安定して活躍してもらえる人材との出会いが期待できます。Waris(ワリス)では、こうした業務委託人材の紹介を専門に行っており、転勤に伴う人員の空白期間だけでなく、経営企画や人事といった専門性の高いポジションでも活用が進んでいます。
産休・育休・介護休の代替としてプロ人材を活用した企業の事例集では、代替人員確保に悩む企業がどのように課題を解決したかを具体的に紹介しています。転勤に伴う人員の空白期間への対応を検討されている場合も、参考になる内容です。
まとめ
転勤制度は多くの企業にとって長年当たり前とされてきた仕組みですが、共働き世帯の増加や従業員の価値観の変化、さらには法的なリスクの高まりにより、見直しを迫られる企業が増えています。
廃止や制度変更を進める際は、離職防止やコスト削減といったメリットと、人員配置・人材育成上の課題を両面から検討することが重要です。転勤に頼らない柔軟な人員体制の構築を検討されている場合は、専門性の高いプロ人材の活用も一つの選択肢としてご検討ください。
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