個人事業主(自営業)の産休・育休|保育園の壁を乗り越えるために知っておきたい制度と対策

「個人事業主として働き続けたいけど、出産後の産休・育休はどうなるの?」
「子どもを保育園に預けられず、キャリアが途絶えてしまうのではないか…」

会社員とは異なる働き方を選ぶ個人事業主(自営業)の皆さんから、こうした不安の声をよく伺います。

確かに、現在の制度では、個人事業主が出産・育児の際に会社員と同じ公的支援を受けにくいのが実情です。しかし、事前に制度を正しく理解し、準備をすれば、乗り越えられない壁ではありません。

この記事では、一人の個人事業主のリアルな体験談を通して、私たちが直面する課題と、その解決のために今からできることを考えていきます。自分らしいキャリアを諦めないためのヒントが、きっと見つかるはずです。

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▼ 目次
1. 育休を取ろうとした時にいわれた驚きの言葉
2. 2人目以降の出産は特に注意
3. 頑張って両立を目指したものの・・
4. 新しい働き方に制度がまだ追いついていない

1. 育休を取ろうとした時にいわれた驚きの言葉

Aさんは38歳。

大手メーカー2社で培った広報・PRの経験を活かし、3年前に自営業として独立しました。

現在は業務委託という形態で、ベンチャー企業など数社の広報戦略立案を担当しています。

プライベートでは、5歳になる女の子のママ。待望の長男を妊娠し、来月出産予定です。

この3年間、仕事に育児に全力で走り続けてきたので、2人目出産を機に1年ほど育休を取り、家族と向き合う時間を作りたいと考えています。

Aさんの仕事ぶりを信頼していたクライアントは、「産後、落ち着いたらぜひ戻ってきてください!」とあたたかい言葉をかけてくれました。

こうして産休に入ったAさん。時間ができたので、「少し気が早いかな」と思いながら、区役所に足を運び、長男の保育園について相談することに。

ところが、そこで区役所の職員が口にしたのは、思いもよらない言葉でした。

産後2ヶ月で仕事に復帰しないと、上のお子さんに保育園を退園してもらうことになります

Aさんは耳を疑いました。会社員時代、長女を出産した時は、1年間の育休を取得できたのに・・・。

Aさんの住む地域は待機児童が多く、一度保育園を退園すれば、仕事を再開するとき元の園に戻れるという保証はありません。

毎日保育園に行くことを楽しみにしている長女を、友達から引き離し生活が一変するのも心配です。

育休は働く人の権利ではないのかとAさんが尋ねると、職員は申し訳なさそうにこう答えました。

「育児休業は、会社に雇われ、雇用保険に加入している人のための制度です。個人事業主の方が産後お仕事を休むのは自由ですが、それは法律で決められた「育休」ではありません。なので、下のお子さんの育休中、上のお子さんの退園を免除するという措置を適用することができません」

産後1年間は子どもとゆっくり過ごす・・・というビジョンが崩れ、Aさんは言葉を失いました。

2. 2人目以降の出産は特に注意

特に、2人目以降の出産を予定している方は、一定期間(産後57日という自治体が多いようですが、期間や条件は自治体によってさまざまです)を超えて仕事を休むと、休業状態と見なされます。

そのため、上のお子さんが保育園を退園しなければならないことがあるので、注意が必要です。

産休・育休が取得できないということは、会社員なら産休・育休中に支給される「出産手当金」や「育児休業給付金」も受け取れないということ。

働かなければそのぶん収入が途絶えてしまうという経済的な事情も、出産した個人事業主の復帰を早める大きな要因になっています。

落ち込んだ気持ちを立て直し、「産後、できるだけ早く仕事に復帰しよう」と決めたAさん。

しかし、出産後も働き続けたいと願うAさんの前に、この後さらに自営業ならではの壁が立ちはだかります。

3. 頑張って両立を目指したものの・・

「まだ体調も安定しない時期に仕事を再開するなんて・・」と一度は仕事を続けることをあきらめかけました。

しかし、夫が「できる限り協力する」と約束してくれたこともあり、「産後、できるだけ早く仕事に復帰しよう」と決意しました。

無事に長男を出産後、すぐに保育園探しを始めますが、そもそも生後2ヶ月から子どもを預かってくれる保育園が限られているうえ、認可保育園は数百人の待機児童が名前を連ねている状態。年度途中での入園は現実的ではありません。

都の認証保育園や認可外保育施設にも問い合わせましたが、どこも定員はいっぱい。

仕方なく、自宅で長男の世話をしながら、少しずつ仕事を再開することにしました。

日中、子どもが眠っているわずかな時間や、夜の睡眠時間を削って仕事をするようになったAさん。産後の疲れもあり、育児と仕事の両立は決して楽ではありません。

長男が1歳になる来年の4月には何とか保育園に入園したいと、再び区役所に足を運びました。

区役所で手渡された保育園の入園書類には、「利用調整基準」という指数表が添付されています。この指数を基に、保育園に入園できるかどうかが決まるのです。

Aさん「育休明けで仕事に復帰する場合、2点の加点がもらえるのですね」

区の職員「はい。しかし、自営業の方はそもそも「育休」という概念がないので、加点の対象になりません」

Aさん「でも、私は既に仕事を再開しているんですよ」

職員「都の認証保育所や、ベビーシッターを利用していますか?」

Aさん「いいえ。認証園はどこもいっぱいですし、ベビーシッターは値段が高くて頻繁には利用できません」

職員「申し訳ないのですが、ご自宅でお子さんを見ながらお仕事をしている場合、さらに1点の減点になります」

Aさんの住んでいる地域では、1歳児クラスに入園を希望する子どもが非常に多く、1点の違いが、入園の可否を大きく左右します。

たかが1点かもしれませんが、Aさんにとっては、仕事を続けられるかどうかの大きな1点。Aさんは怒りを抑えて聞き返しました。

A「つまり、産後2ヶ月で、やむを得ず自宅で子どもをみながら仕事を再開したフリーランスより、1年間育休を取得して、仕事に復帰する正社員の方が、認可保育園の入園には有利ということですか?

職員「はい、そういうことになります」

産後すぐに仕事を再開しなければ上の子が退園になると聞いたから、下の子の保育園が見つからないまま無理を押して仕事に復帰したのに、今度は自宅で働いていることを理由に、下の子が保育園に入れない・・・

あまりの理不尽さに、Aさんは言葉を失って呆然とするばかりでした。

4. 課題を乗り越え、自分らしいキャリアを築くために

Aさんのように、多くの個人事業主が制度の壁に直面しています。現在の制度が、多様化する働き方の実態に追いついていないのは事実です。

しかし、そこでキャリアを諦める必要はありません。この状況を乗り越え、自分らしい働き方を続けるために、私たちにできることがあります。

徹底した情報収集と事前準備
まず、お住まいの自治体の制度を徹底的に調べましょう。保育園の入園基準や申請のタイミングは自治体によって大きく異なります。「育休明け加点」や「同伴就労での減点」の有無など、妊娠がわかった段階で窓口に何度も足を運び、最新情報を確認することが不可欠です。

あらゆる選択肢を検討する
認可保育園だけでなく、認証・認可外保育施設、ベビーシッター、ファミリーサポートなど、あらゆる選択肢を視野に入れましょう。自治体によってはベビーシッターの利用補助制度が用意されている場合もあります。選択肢を広く持つことで、心に余裕が生まれます。

キャリアを「ジャングルジム」で捉える
Waris代表の田中は、著書などで「女性のキャリアは『ジャングルジム型』」とお伝えしています。 上に登るだけでなく、横や斜めにも自由に移動できるように、ライフイベントに合わせて働き方を柔軟に変えていく視点が、自分らしいキャリアの実現につながります。

産後は一時的に仕事のペースを落とさざるを得ないかもしれません。しかし、それはキャリアの停滞ではなく、次のステップに進むための大切な準備期間です。予期せぬ出来事も前向きに捉え、その時々の変化を楽しむしなやかさが、未来の可能性を広げてくれるはずです。

制度の壁に一人で悩まないでください。Warisは、誰もが自分らしく働き続けられる社会を目指し、これからも皆さんと共に歩んでいきます。

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